拙著でダイオキシンの毒性に関するPitotらの論文を紹介した。この論文は和田先生の論文の引用から参照したものだが、ダイオキシンなどこれまで「毒物」と言われていた概念を変えるのに役立つものである。
Pitotらの論文は、1987年に出たもので、雑誌や題名は次のものである。
ここにダイオキシンの濃度に対するラットの異常発生のカーブが載っており、それは拙著に示したようにU字カーブになっている。
この図はPitotらの論文を引用した和田先生のまとめに沿っているが、そこで、和田先生は「U字カーブを為すときには、低用量でガンを抑制することを示す」という意味のことを書いておられる。
著者の専門分野の一般毒物や放射線でも、同じ傾向が見られ、一般的にU字カーブを描くのは、自然界に低濃度に存在するので生物がそれに適応してある濃度の時にもっとも安全なように体の仕組みが出来ていると考えられる。
また、このことはダイオキシンが自然界で有意な量として存在することを示しており、アメリカ合衆国におけるダイオキシン量の半分以上が山火事などであることと符合している。
このデータは実に重要で、我々が毒物についてエクセントリックに考えることなく、慎重にしないと我々の体の防御作用自体を破壊する可能性を示唆している。
(この記事を書いた一つの理由は、読者からPitotのデータが違うのではないかと言っている人がいるがどうか、との質問があったからで、ネットを見てみると確かにPitotのデータそのものが無いようなことが書かれている。
事実と異なる反論で、おそらくは見落としたか、あるいは学術論文を引用する場合に、そこに書かれた事実(データ)を整理して記載するということをご存じないかだと思う。
でも、このPitotの論文が意味するところは、今後の環境を考える意味で重要なので、読者の方の為に、再度、示した。)
(平成20年5月8日 執筆)