「武田先生はなぜ、そんなにNHKを目の敵(かたき)にするのですか?」と聞かれることがある。目の敵にしているのではないが、一刻も早く、「誤報はしてはいけない」とNHK内部で決めて欲しいのだ。

 

 私は人生の大半をNHKから「事実」を「得て」きた。NHKの放送は事実を得るものとして役に立つと信じていたのだ。

 

 でも15年ほど前からNHKの環境報道を見るようになって、ビックリした。それは「私が事実を知ってからNHKの報道をみるようになった」からである。それまでは「私は事実を知らず、NHKの報道で事実を知ろうとしていた」ということだったので、180度違う。

 

 ビックリしたのは余りに多い誤報だった。そしてその誤報には常にある傾向があった。それは「政府より」であり「利権より」であり、かつ「事実と違っても、NHKが正しいと思う方向だけ報道する」ということだった。

 

 リサイクルもダイオキシンもみんな誤報だった。

 

 そして200858日、朝の番組で家電リサイクルの報道で誤報をしていた。

 

 ブラウン管を破砕する。そこには大量の鉛が入っている。それを途上国に出していると報道していたが、これがバーゼル条約(有毒廃棄物の越境禁止)とどう言う関係にあるか、報道しなかった。

 

 家電製品をリサイクルしていると報道していたが、本当に「資源を節約できるリサイクルがされているのか」については、報道しない。解体現場だけを報道していた。家電に使用されるプラスチックの大半をリサイクルで利用できるような規模の市場は日本にはない。もともと存在しないことをNHKもよく分かっていることだ。

 

 とすると、プラスチックはリサイクルされていない。しかし、リサイクルされていると報道していた。

 

 また、リサイクル実施側に多くの法律違反がある。一つは「リサイクルすると言って3000円取って、それを中古で売る」ということだ。それは週間ダイヤモンドの報道では50%を超える。私の調査でもほぼその程度だ。

 

 市民は一方的に損害を被っている。それなのに報道しない。

 

 だから、約2000万台を超える廃家電の半分以上が法律違反なのに、たった900台そこそこの名古屋市民の「不法投棄」を糺弾していた。そして法律違反すると何年の懲役か1000万円以下の罰金と庶民を脅していた。

 

 「脅しているのではなく、事実だ」と言うだろう。でも違う。まず守るのは国が指導し大手家電メーカーが社会的倫理でやっているリサイクル実施側であり、それが“1000万台”も違反しているのに、市民のわずか“900台”を問題にする。それは余りに不当で、あまりに市民イジメである。

 

 NHKはどうしたのだろう?

 

 1000万台の法律違反は政府側だから報道せず、900台の不法投棄は市民側だから報道するという姿勢だ。

 

 またもっと奥深いところには、家電リサイクル制度があるからまだ中古として使えるテレビを解体しなければならない。この法律上の矛盾についても取材はしているが、一切、コメントしない。それは「テレビを買え代えさせなければならない」という力に屈したのだろう。

 

 NHKは視聴料でなりたっている(正しくはテレビ設置料)。それを払っているのは市民だ。私ももし、自分の調査がなければ今日の報道を事実だと思うだろうが、知っているが故に誤報と判る。

 

 事実を知らない人はNHKを見ても無駄だ。何のための報道だろう?

 

視聴料は返してもらわなければならず、誤報を信じて損害を被っただけ、損害賠償をもらいたい。

 

(平成2058日 やや怒って執筆)