経産省と環境省は2008328日、「企業別・温暖化ガスの排出量」を公表した(数字は二酸化炭素換算)。

 

 企業別では、鉄鋼業でJFEスチール(6000万トン)、新日鉄(5900万トン)、住友金属工業(2200万トン)、神戸製鋼所(1700万トン)。

 

 発電では、東京電力(6900万トン)、中部電力(4700万トン)、電源開発(4400万トン)。

 

 都道府県では、千葉県>愛知>広島>兵庫・・・>東京都(16位)である。何となく上位にランクされた企業や県は「悪いことをしている」ように見える。

 

 一方、政府は温暖化防止の為に「あなたには何ができますか?」と呼びかけ、家庭で電気をこまめに消すことを勧めている。電気をつけると二酸化炭素がでるらしい(本当に「出る」)。だから、個人も二酸化炭素を出していることになる。

 

 政府はなにを言っているのか??

 

 誰が二酸化炭素を出しているのだろうか??

 

 電力会社が二酸化炭素を出しいているのか、それとも個人か? 電気を生産して市民の家まで運ぶのに二酸化炭素を出すのだが、個人が電気を使わなければ二酸化炭素は出ない。

 

 東京電力は6900万トンの二酸化炭素を出しているが、個人や事業所が電力を半分しか使わなければ、3450万トンになる。

 

 鉄鋼会社でも同じだ。市民が自動車を買わなければ鉄鋼会社の生産量は減り、二酸化炭素の排出は下がる。日本の鉄鋼会社は技術革新を続け、エネルギー源単位を下げ、実に現在では世界でもっとも二酸化炭素の排出量が低い。

 

 つまり、鉄鋼一トンを生産する時にでる二酸化炭素は世界でもっとも少ないのだ。オリンピックで言えば、JFEも新日鉄も「金メダル」である。

 

 せっかく、日本代表でオリンピック100メートルにでて9秒で走って金メダルを取ったのに、日本に帰ってきたら非難されたようなものだ。鉄鋼会社もとまどっているだろう。

 

 二酸化炭素は誰が出しているのだろうか?

 

 もちろん、市民が出しているのだ。そんなことは決まっている。

 

鉄鋼会社は「温暖化防止」などと言わなくても「エネルギー源単位を下げて、コスト競争力をつける」ということは企業の活動そのものだから常に最大限の努力をしている。

 

企業が「二酸化炭素を減らす」という活動は企業本来のものであり、温暖化とは関係がない。だから、このことは企業に呼びかけても企業のランキングを発表してもなにも意味がない。

 

 一方、市民は一所懸命、働いて給料をもらい、そのお金で電気をつける。明るい生活を望むのか、それとも美味しいものを食べるか、着る物にお金を掛けるのかはその人個人の人生の選択であって、「善良な市民」としての行動の範囲なら問題はない。

 

 「ものには限度」があるから普通の家庭でゴア元副大統領のように、一ヶ月の電気代が30万円というのは問題になるだろうが、7千円か14千円かは善良な市民の選択の範囲だ。

 

 もし「節電しなければ善良な市民ではない」というなら、軽自動車に乗れば「善良」であり、レクサスを買えば非難しなければならない。

 

メタボリックではないけれど、全国民のお腹の寸法を制限するように「一ヶ月に20万円以上は使ってはいけません。自動車は軽自動車を買わなければ罰します」としなければならない。

 

なにからなにまで規制すれば、税金は取れるし、天下り先はどんどんできる。また一泊9万円の旅行がタダでできるというものだ。

 

 給料の範囲内で善良な市民として生活することは正しいことであり、給料を上げようとして勉強し、努力することも正しいことである。

 

 節約は節約を目的としたものではなく、自分の人生を充実したものにするためには、多くの人にとって「物」はあまり役には立たないということである。

 

 使命を感じる職場、笑い声の絶えない家族、そしてたまに会う親友・・・それが私たちが求めているものであり、そうすれば二酸化炭素は減る。それ以外に方法はない。方法がないことを勇気を持って認めることだ。

 

 政府の施策は天下り先を作るのではなく、国民が「使命を感じる職場」、「笑い声の絶えない家庭」、そして「友達と歓談できる機会」を作ることであり、見当はずれの規制をすることではない。

 

(平成2053日 執筆)