この世には、一流大学の入学試験や公務員試験に合格しても、「引き算」ができない人たちがいる。
いつも、引き算ができない人の集団は環境省、そして自治体の市長さん、スーパーの経営者などが目立つ。
例1
引き算ができない人の宣言
「レジ袋を追放したら、石油が約30万トン減る」(環境省)
引き算
「レジ袋の量」―(「専用ゴミ袋の量」+「マイバッグの量」)
レジ袋は確かに石油から作られる。でも、これまで「買い物に使ったレジ袋」や「捨てる段ボール」をゴミ捨てに使っていたのに、その「リユース」はダメと環境省は言う。
おまけに「引き算はできない」とも言う。ゴミ袋の生産量すらなかなか見つけることができない。
基本的には日本全土で捨てられるゴミの量が変わらなければ、それを入れるゴミ袋も変わらないのだから、「マイバッグ」分だけが増えるのは引き算ができる人なら直感的にわかる。
引き算をしないのは「タダで渡すレジ袋」が「買ってもらうゴミ袋」にかわるのだから、誰にメリットがあるかは明白である。だから、メリットを受ける人は一斉に「引き算ができない人」に変身する。
変身にはお金がいるらしい。それは、南極の氷も同じだ。
例2
「南極の周辺の氷が融けているので、氷は減っている」(環境省)
引き算
「南極の氷の増減」=「降る雪の量」―「融ける氷の量」
当たり前である。
日本の人口の増減=生まれる人―死ぬ人
である。毎日、葬儀場にいって死ぬ人を見て「人口が減っている」というバカな人はいない。でも南極大陸の端の氷が融けているのを見て「氷が減っている」と環境省は言っている。
温暖化によってひどいことが起こると言えば、補助金が貰えるとか、利権が増えるとか、天下りができる人は「引き算ができない人」に変身する。
南極大陸の氷は中心部ででき、周辺が融ける。寒冷化しても温暖化しても周辺部はいつも融けている。それは人口が増えても減っても死ぬ人がいることと同じである。
例3
「森林は二酸化炭素を吸収する」(環境省)
引き算
「成長するときに吸収した量」―「枯れて土に帰るときに分解される量」
もちろん、差し引きはゼロである。小さなチャンバーの中に土を敷き、そこに種を植える。やがて芽を出し、木になり、そして数10年後には死んで微生物が分解して土に帰る。後に何も残らないのだから、チャンバーの中の二酸化炭素も変わらない。
ややこしいのは、この問題では、引き算が二つある。
森の大きさが変わらないのは、
「生長する木」―「枯れていく木」
の引き算がゼロだからだ。つまり、森が二酸化炭素を吸収するのではなく、成長期の森だけが二酸化炭素を吸収するが、それは後にツケとなって二酸化炭素を放出する、ということだ。
このページに二度にわたって「足し算ができない人」と「引き算ができない人」を書いたが、もちろん高級官僚が足し算・引き算ができないのではない。
お金に目がくらむと算数ができなくなるだけである。
(平成20年4月23日 執筆)