拙著(「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」)に掲載したペットボトルのリサイクルのグラフについて、「公的な発表と違う」とのご意見をいただくことがあります。この件についてはすでにこのホームページの特設スタジオで数次にわたって説明していますが、それを簡単に繰り返すと次のようになります。

 

 グラフのデータは「ペットボトルリサイクル協議会」のデータを利用させていただいております。従って、学問的に正しく示すためには参考文献番号を伏して、巻末に参考文献として「ペットボトルリサイクル協議会(ホームページアドレスなど)」を示しておくのが礼儀になります。

 

 通常、学術論文で示す文献は、その参考文献に掲載されたグラフをそのまま示すことはほとんど無く、参考文献に記載された数字などを参考にさせていただき、その結果を論文の著者が利用させていただいたことを示すものです。

 

 一方、著作を読む読者は「その著作のデータは、その著者のデータ」としてグラフを見るのですが、必要に応じて参考文献を取り寄せ、それを読みます。もちろん、参考文献のデータは別の著者のものですから、その中に同じグラフそのものが無くても、その参考文献に示されているデータを参照にしたのだなということを理解することができます。

 

 つまり、著作はそれぞれ独立ですから、著作毎にその著者が内容に責任を持つわけです。

 

 ただ、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の場合は一般書ですから、ペットボトルのリサイクルのグラフの下に「ペットボトルリサイクル協議会のデータから武田研究室が整理した」と記載した方が親切だったかも知れません。

 

 そこで、ある読者から2007年の夏にご指摘を受けたので、出版社と相談して次の二つのことをしました。一つは「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」に「資源をいくらでも使った場合でもリサイクルと呼ぶ」とするとリサイクル量は約10万トンぐらい、「資源の節約になったリサイクル」と定義すると3万トンぐらいになるというのを、ペットボトルリサイクル協議会のデータから計算したことを示しました。

 

 また「パート1」には必要があるかは別にして、参考にさせていただいた機関がご不満であると推定されたので、「武田研の計算による」という注を加えました。

 

 この問題は基本的には今後とも、次の3つの課題を含んでいます。

 

 一つは、ペットボトルリサイクル協議会が「リサイクル率」として示したグラフが実は「回収率」だったことや、「資源を節約できたリサイクル率」を示していないことから、読者が錯覚したということがあります。

 

 もともと学術的には「リサイクル」を専業とする報告が「リサイクル率」を示していないということが考えられないので、多くの読者が協議会がリサイクル率を出していると思い違いをされました。

 

 つまり、私と協議会が対立しているように見えますが、異なったデータは出ていません。協議会がお出しになっている回収率などは拙著でもそのまま示し、協議会のデータから計算されていない「リサイクル率」を私が協議会のデータから計算したという状態です。

 

 このことは大阪の毎日放送テレビの取材に対して協議会自体も「忙しくて計算ができていない」とお認めになっています。

 

 第二に、これは多くの環境の問題がそうですが、「リサイクル率の推移」というグラフが回収率の推移だったり、「業者に渡した量」を「リサイクル量」としていたりする曖昧さがあり、さらに「年」と「年度」がさまざまな資料で統一されていなかったりするので、整理が難しかったことによります。

 

 拙著にも記載しているように、環境関係は特に国民にわかりやすい表現が求められるのに、研究者が時に「イヤになってしまう」というほどわかりにくく公表されるということです。

 

 そして第三にこれまでの報道の問題があります。報道機関は「公的機関の発表した数字」は参考程度であり、自らが取材し、整理したデータが主となるべきです。それをするからこそ取材の自由が確保されているのです。

 

 ところが予算の関係などで、最近の日本の報道は「窓口取材」が多く、その数字が「事実なのか」を確認しません。だから、報道される数字は「事実」ではなく、「ある人や機関が話した数字」に過ぎないのです。

 

 でも日本人は比較的、素直なので、「公的に発表された数字に間違いはない」としていますが、紙のリサイクルでも年金でもすでに公的に発表される数字がかなりいい加減であることは判っています。

 

  

 なお、この問題はホームページの他、公表されたものとしては、日経エコロジー200711月号に詳細に計算根拠を示しています。公表したものは雑誌社などの権利がありますから、私の方からは公開は控えています。

 

(平成20412日 執筆)