「愛、地球博」が行われる少し前、私は朝日新聞の取材を受け、「見かけの環境ではなく、自然と調和して生きる未来の私たちの生活を万博会場で現出することができたら、歴史に残るだろう」というコメントを出した。

 

 この記事は写真入りでかなり大きく取り上げていただいたが、万博の計画にはなんの影響もなかった。

 

 そして万博が行われた。入場人数が多いこと、それが万博が成功したかどうかのバロメーターになり「環境」の理念は消えた。

 

 それから2年。さまざまな形で万博の偽装が明らかになってきている。20080410日、また一つ、偽装が報道された。

 

・・・愛知万博の注目施設のひとつだった生ごみを使った発電が失敗に終わった。万博が終わった後、ゴミ発電装置が中部空港近くの埋め立て地に移され、実用化をめざした実験が続けられていたが、一般の電力の20倍もの費用がかかることがわかり、愛知県が実験を中止した・・・

 

 20倍ものコストになる発電が事前に分からなかったはずはない。日本には化学工学や発電工学があるのだから、事前に成立しないことは判ることだ。

 

 愛知県は批判されるだろうが、この計画を発案した人、この計画にかかった総経費、それを受け取った会社、そしてなぜこのようなことが起こったのかの情報を公開をした方がよい。

 

私は愛知県を批判するのではない。このような機会に自己反省しておいた方が長い自治体の歴史では評価されるだろう。「臭い物に蓋」をし続けているとろくなことはない。

 

発電について少しでも知識のある人は、熱力学の「効率の原理」を知っている。それは「発電効率は主として高温側の温度で決定される」というものだ。だから、カロリーの低い生ゴミの発電がエネルギーの回収にならないことは判るはずだ。

 

生ゴミの発熱量が低いことはすでによく分かっている。だから、この事件は、誰かが「科学的ではない、意図的な偽装」をしなければ計画自体が始まらない。

 

次の段階では、万博で宣伝し、税金を使うのだから「計画が適当か」という審査が行われたはずだ。私の知り合いの誠意のある大学の先生は「自治体の環境の会議で、不誠実な専門家が多くてガッカリする」と言っておられた。真面目な先生がガッカリする原因を取り除いておいたらどうか。

 

最後に、この計画に使った7億円と言われる装置、土地の借地料(公的な土地であったら遺失利益)、県庁役人の人件費などをできるだけ多く集計して、この計画でどの程度の税金を使ったのかを愛知県自らがハッキリさせる。

 

使った税金があるなら、それをもらった会社があるはずだから、それも明らかにしたらどうか。

 

自治体は県民のためにある。だから、この際、今回のハッキリした事件の内容を自ら明らかにすることによって、県政はガラス張りになり、将来はその数10倍のメリットを受けるだろう。

 

ところで、拙著にも書いたが、愛知万博では「ゴミを分別してリサイクルする」と称して、実際には分別したゴミをまとめて焼却したと言われる。それについての一切の調査に応じない。

 

万博のゴミのリサイクルで、取材しないで偽装報道をしたと考えられるNHKも調査には応じない。

 

今回の事件では、生ゴミ発電はコストが20倍という誰でも計算できる簡単なミスを犯し、「万博リサイクル」では分別したゴミを一括して焼却したのだから、その計画と実施自体が全部「偽装」だったと思われる。

 

「完全偽装万博」、それが哀しい現実だろう。余りに大きい偽装だから、多くの人はそれに手をつけることを躊躇するだろうが、偽装社会を打破するには大きい方から手をつける方が良い。

 

とにかく、万博に訪れた多くの善意の人たちをこれほど裏切ったのだから、その実像を明らかにするべきである。

 

偽装が横行し、それが闇の中に消える社会・・・それは日本であって欲しくない。

 

(平成20411日 執筆)