温暖化については、拙著で、多くの方に新しい視点を提供できたと思います。京都議定書の評価やIPCCの報告、北極と南極の氷の溶解などについて特にインパクトがあったと感じています。

 

その中で、小さな点を批判されている方がおられます。その一つに「北極の氷は海に浮いている氷だけではない」という批判です。

 

まず、IPCCが正式に発表している表を示します。「グリーンランド」や「南極」という記述はありますが、「北極」はありません。批判されている方はIPCCをよくお読みではないように思います。

 

 IPCC極地表.jpg

 

 この表から判るようにIPCCは従来からグリーンランドについては解析を進めていますが、「北極」という表現は余り使っていません。それは温暖化による影響を考える上で「北極」とグリーンランドは異なり、また北極はあまり重要ではないからです。

 

 IPCCの表現を受けて、私の本では「北極」という中に「グリーンランド」などの陸氷を除いた表現を使いました。これは現在でもたとえばテレビで「北極の氷が融けて海の面積が大きくなった」という使用をした場合、視聴者は「海に浮かんでいる氷が融けて水面が見えてきたのだな」と認識すると思います。

 

北極という表現はこの方が普通であると思います。

 

 なお、学術的な論文の場合には、「北極」または「北極圏」さらには「極地」という用語についてはその定義を行って使用します。しかし、一般的な書籍では「読む人が容易に理解できて、文面から正しく把握できる」ということを重視し、それはテレビでも新聞でも、また一般向けの書籍でも同じです。

 

 北極の氷にしろ、南極もそうですが、専門家が解説を行う場合にはそれを読んだり見たりしている人の錯覚を誘導するようなことは望ましくないと考えます。

 

 人によって若干の差はあると思いますが、私の本では「北極の氷は海に浮いているから」としてあるので、おおよその定義を行っています。従って、拙著の表現に問題がないと考えています。

 

 それより、温暖化によって海水面がどうなるのか、従来からの日本の環境白書や報道に問題はなかったのかという大きなところに対して異論があれば、それを議論した方がみんなの為になると思います。

 

 私は学者ですから批判は歓迎ですが、批判とはそれを通じてなんらか認識が前進することでなければ批判の価値はありません。個人的な批判はほとんど意味がないと私は考えます。

 

(平成2049日 追加執筆)