最近、2,3の温暖化に関する執筆をしたので、その機会にもう一度「温暖化は日本の環境問題か?」を問い直してみた。特に「日本人が被害を受けるか」という視点で最初に考えて見たい。

 

 もちろん、環境は世界の問題でもあるが、複雑な問題を一度に全部を考えるのは上策ではない。温暖化は21世紀の危機とも言われているので、このような巨大な問題は、順序を追うことにして、まず「日本」に限定した。

 

 人間の頭は不思議なもので、いったん「こう!」と思うと、何が何でもこじつける傾向がある。温暖化が環境問題であることは当たり前のように思うが、もしかするとそうではない可能性もある。

 

 そこで、まず「温暖化が怖い」と言われる理由をリストアップしてみた。そして次にリストから、「メルヘンに属するもの」、「日本に関係がないもの」、そして「被害が小さいもの」を除いた。

 

 まず「メルヘン」であるが、「北極の氷が融けてシロクマが溺れた」、「日本の高山植物が打撃を受ける」というようなものはメルヘンに属するものとして除外した。

 

自然との共生という意味では環境の破壊であるし、私自身が自然の中で生活をするのが好きだから、スズメも高山植物も大事だが、「温暖化は地獄のようなものだ」ということから見ると除外するべきだろう。

 

 次にバングラディッシュが水浸しになる、ツバルが沈むという一連の予想だが、かりに温暖化で水浸しになる国があれば、気の毒ではあるが、日本に関係がなければ除いた。

 

 ツバルの海域はハワイ大学が測定しているが、これまで5センチほどの上昇が見られる。5センチではツバルは沈没しない。ツバルはサンゴ礁だが、サンゴというのは水中に生息する生物だからサンゴ礁は基本的に海抜ゼロメートルであり、浸水しているところは地盤沈下が原因している。

 

 「被害が小さいもの」、または「少しの防御をしたら被害がでないもの」はかなり項目が多かった。たとえば、海水面が11センチ上昇する、コメの病気が増える、作物が少し北にずれる、マラリアがはやる、熱中症が増える・・・などである。

 

 これらは一つ一つ検討した。海水面は、潮の満ち引きで2メートル、季節で40センチ、地盤沈下で約1メートルで、専門家の方からメールをいただき、さらに1メートル程度の安全を見ているということなので11センチの上昇は「著しい被害」が起きないとした。

 

 コメの収穫については農業環境試験所が詳細な研究をしていて、温暖化によってコメが豊作になるとの結果を出している。当然ではあるがコメは熱帯性穀類で、コメを主食とする民族のうち、日本は最北端にあたるから温暖化は歓迎である。農業関係は良いことばかりであった。

 

 次にマラリアや熱中症だが、マラリアはワクチン量、台湾などの亜熱帯性地帯の最近のマラリアの感染率などが低いので、日本の衛生設備を考えると問題にはならない。

 熱中症の増加については予測がでているが、温暖化によって雪下ろしによる1ヶ月70人の犠牲者や、寒さによる心臓、血圧、脳血管系の疾病に比較して格段に少ないので、問題がないとした。

 

 温暖化というのは現在の気温が変わることを意味している。変化はすべて「良いことと悪いこと」が起こる。よほどのことがない限り「良いことだけ」というのはないから、変化が環境の「破壊」と言うためには「悪いことが良いことより多い」というのが要件である。

 

 温暖化によって作物は増産し、怪我や病気によって犠牲になる人が少なくなるので、環境破壊にはならない。

 

 最後に「異常気象」を検討しなければならない。本来の「異常気象」というのは大変、定義が難しいが、ここでは「日本の普通の人が異常気象と思っていること」・・・つまり、竜巻、大雨、大型台風、暴風などを指すとして考えた。

 

 国連の世界気象機構は「現在の異常気象と言われるものと、温暖化との相関関係は明確ではない」としていることをまず頭に入れる。科学は自分の想像だけであたかも事実のように発言するのを控える。だから、本来は世界気象機構が「温暖化は異常気象には関係がない」と言っている限りあまり心配することはないだろう。

 

 特に、日本は温帯の島国であること、中央に山脈があること、二大海流が日本の沿岸に流れていること、台風という「異常気象」に毎年、見舞われていること、地震や雷が多いこと、などから、現在の気象が大きく変化することはない。

 

 つまり、温暖化でIPCCが言っているように、「夏の暑い日が増え、冬の寒い日が減る」というようなスタンダードな変化は別にすると、主に「大陸、亜寒帯、亜熱帯」で起こることで、日本のように四面を海で囲まれた温帯で起こることはない。

 

 もともと、「海」というのは「大気」や「陸地」より遙かに「懐(ふところ)」が深い。環境を考える時の「懐」とは、たとえば熱容量が大きくて少々の温度変化は吸収するとか、海流が激しいので少しのものは持って行ってしまうなどを言う。

 

 なんと言っても「水だから温度が変わらないし、移動するので陸のように一カ所で止まっていることはない」という特徴がある。温度という点では空気が1℃上がる熱と、水が3500分の1℃上がる熱が同じ・・・余りに違って少しわかりにくいが・・・である。

 

 つまり大気の温度が上がっても、その熱が海洋に吸収されれば海洋の温度はほとんど上がらないし、もし海洋の温度が変われば熱の量としては大気の温度は大きく変化するということになる。実際には、熱が交換するからややこしく、複雑な計算をしなければならないが、経験的には「海洋性気候」ということだ。

 

 総じて言えば、世界の平均的な温度変化より、日本の温度変化がかなり小さいし、広大な陸地面積が必要な大型竜巻や暴風なども緩和される。

 

  これらをすべて集計すると、全体としてみれば「温暖化は環境改善である」ということになる。

 

 さて、執筆に困った。目の前に「環境破壊としての温暖化」の原稿がある。でも「温暖化は環境を良くする」という予測になるのに、なぜ、この原稿を書かなければならないのか??

 

 世界はともかく、温暖化が日本人大きな被害を与えるという根拠はどこにあるのだろうか? 当たり前と考えていることのなかに、まったく違う(自然現象ではない人間のしくんだ)恐ろしいことが隠れてているようだ。

 

(平成20126日執筆)