視聴者の一人である私が頻繁にNHKの誤報を修正しなければならないのは辛いが、NHKは視聴者が作るものなので、あえて誤報を修正しておく。
2008年1月21日の朝の総合テレビで、NHKはいつものように温暖化で誤報をした。それは、アナウンサーによると、
「温暖化でオゾンホールが拡大すると懸念されている」
と放送し、紫外線の強い南半球の国を紹介していた。
NHKの報道を信じている視聴者は温暖化とオゾンホールが関係していて、ゆゆしい事態と思うだろう。そういう警告報道だった。NHKは視聴者を騙してはいけない。
オゾンホールとは1980年代に見いだされた、または学術的に確定した南極の成層圏におけるオゾンの濃度の低下であり、まるでオゾン層に穴が空いているような感じなので、オゾンホールと命名された。
下の図で青い色のところが南極上空のオゾンホールであり、これは1990年にNASA(アメリカ航空宇宙局)から提供されたものである。
1990年頃には、疑いもなくオゾンホールは明確になり、オゾン層を破壊すると考えられるフルオロカーボンなどの化合物(日本ではフロンと呼んでいるが、これは正しい用語ではない)が原因とされて、世界的に排出を制限した。
その結果、オゾンホールの拡大は現在、ややおさまっている。図に示したように、気象庁の2003年の発表では、オゾンホールの面積は1992年頃から安定し、だいたい2500万平方キロメートルである。
もちろん今後も、注意してオゾンホールの変化をみなければならず、また気象庁も毎年、詳細な報告を出している。
これに対して、現在問題になっている温暖化は、よく知られているように1980年代から始まり、1990年から気温の上昇が見られる。また、この二つの現象が関係しているとはIPCC(国連の地球温暖化政府間パネル)などの正式な機関も表明していない。
だからNHKの報道は偽装報道である。訂正報道してもらいたい。温暖化に関してはNHKは常にIPCCを無視した報道を繰り返している。それを指導している人がいたらテレビに顔を出して欲しい。
NHKは先入観や、非科学的知見、あるいはある特定の学者のグループの考え方をそのまま報道してはいけない。まずはIPCCの正式見解をのべ、オゾンホールが温暖化に影響があるという学者がいたら、その学者の発言として「IPCCとは違うが」という注釈をつけて報道しなければならない。
NHKは放送法(第三条:公正な報道)に違反している。現在の日本に「何でも温暖化おじさん」がいるのは確かだが、NHKもそれに染まっている。
NHKにも良心的な記者がおられるだろう。早く偽装報道を指摘して「正常な報道機関としてのNHK」に戻してもらいたい。
科学的事実はNHKの視聴率や存続とは無関係である。
(2008年1月21日 執筆)