テレビで中国の小学校教育を紹介している。毎日、ビッシリと授業が詰まっていて、日曜日も家で勉強する人が多いという。そしてスタジオの人は一様に「努力することは素晴らしい!」という気分でコメントしていた。

 

 素直な感想だろう。小学生がグダグダしているより張り切って勉強している方が気持ちが良いし、何か将来に明るい希望が持てる。当然のことのように思う。

 

 もう一つのテレビ番組ではベトナムのホーチミン市の浸水を放映していた。高潮の時には日常的に、低い土地に海水が侵入して来るというニュースだ。普通なら「温暖化のせい」と言うところだが、少し抑制して将来は温暖化でもっと酷くなるという警告をしていた。

 

 この二つの番組を見て、よく言われることだが、本当に現代という時代は「思考停止の時代」ではないかと思った。ちょっと考えればすぐ判ることを、なぜ「全く何も考えない」のだろうか、何が原因してるのだろうかと訝(いぶか)った。

 

 「ゆとりの教育」をはじめ、授業時間を短くし、児童が勉強しなくなれば試験を受けたときの成績を「学力」と言うなら、それが低下するのは当たり前だ。それなのに、「ゆとりの教育をはじめたら学力が落ちたから、昔に戻さなければならない」と言うなら最初からそんなことをしなければ良い。

 

 それとも「試験」をゆとりの教育で育(はぐく)まれる能力・・・それが何であるかは不明だが・・・を問えば成績は上がるだろう。もしゆとりの教育でどういう能力をつけるのか、それをどうして判定するのか決まっていなければ、非難されるのもまた覚悟のうえだろう。

 

 なぜ、ゆとりの教育を実施したのか、これだけ情報があってもそれを知ることができないまま、この騒動は終わりを告げ、ゆとりの教育は無くなろうとしている。そして、被害を受けたのは一時期の変な教育を受けた児童だけだった。

 

 都市の浸水も同じだ。

 

 地球は温暖と寒冷を繰り返し、そのたびごとに海水面は何メートルということはないが、若干、下がったり上がったりする。そうすると海岸線は後退したり、前進したりする。これは「海退」、「海進」と言い、用語もある。

 

 かつて寒冷期に海岸線は少し遠ざかり、人間はそれにそって海の方に出て生活をする。そのうち、温暖化が進んでくると海進が進むので、人間はまた山の方に移動する。それが人間の生活だった。

 

 昔は住宅を移動することができたので、海退、海進の時に移動した。今では大規模土木工事が可能で、都市構造も強固になったので、都市を移動せず、堤防の高低で調整している。

 

 テレビの報道していた浸水の原因は、第一に人間が水辺ギリギリに住む修正を持っていることによる、第二に工業化や住宅化による地盤の方の沈下だ。普通は温暖化による水面の上昇より都市化による地盤沈下が先だからだ。

 

 都市化による地盤沈下が原因で浸水しているのなら、「二酸化炭素の削減」などをしてもまったく見当はずれだ。しばらくして、二酸化炭素の問題が無くなっても浸水していることに気がつき、「ああ、あれは地盤沈下だ。なんでそんなことも考えなかったのか?」と不思議に思うだろう。

 

 報道では「地盤沈下」というもっとも可能性の高い原因についてはまったく触れていなかった。しばらくは「なんでも温暖化おじさん」の奇妙な話を聞かなければならないだろう。

 

 でも、「ゆとりの教育」も「温暖化」もなにか一つのことにとらわれると頭がそれで一杯になり、思考が停止する。この浸水のことで日本がベトナムに資金援助をするという。国民の税金を使うなら頭を冷やして使ってもらいたいと願う。