「目標をあまり気にしないで、目の前のことをともかくやる」というのが、スムースな人生を送るのに大切のように思った。
目標を意識しすぎると、とかく「損得」の方に意識が行く。大げさに言えばちょっとしたことも「こんなこと俺の人生にどんな役に立つのか?」という訳である。
ちょっと何かを取ってきたり、少し調べ物をしたり、頼まれてお得意さんのところに行くときに、いちいち「俺の人生」などと考えても意味がない。
第一、朝、歯を磨くのに「今日、磨かなければどうなるか?」などと考えるムダなのと一緒だ。
大学で学生と生活をすると、そんなことをよく経験する。なにか学生に頼むと、すぐ「先生、何の役に立つのですか?」と聞いてくる。そんなこと判るはずもない。
もちろん、一つ一つを慎重に考えればあるいはやる意味も分かるかも知れないし、無理に理屈をつければつけられないこともない。
「やってみないと役に立つかどうかなんか、判らないよ」と答える。しぶしぶやることはやるが、学生は不満だ。どうやら、彼ら一日中、ボーっとしているのは「得になること」を探しているらしい。
ところで、ものごとがスムースに行っている人の第二番目の特徴は、「他人が決めた期限より早い期限を自分で決める」ということらしい。
考えてみれば誰でも期限に追われている。商売をしている人は支払期限に追われているし、学生はレポート提出期限だ。学者にとっては論文、主婦は夕食というようにみんな期限に追われている。
でも、これも30代にある人に会い、その人の行動を見ていると、ともかく期限より3,4日前に仕事を終わっている。それから、一日10本程度しか吸わないタバコに火をつけてのんびりとしている。
彼はあまりタバコは好きではなかった。だから、タバコを吸う姿はそれほど堂に入ったものではなく、何となく口先で吸っているようにぎこちなかったけれど、それでも煙はゆっくり昇っていた。
あれから20年、今でもその時のその人の顔をハッキリと思い浮かぶ。そんな時にはタバコの煙がゆっくりと立ちのぼっていくのも覚えている。
それからニコッと笑い、「さて」という風に腰を上げてタバコの火を消して次の仕事に取りかかる。次の仕事といっても平のサラリーマンにはそれほど自分で決める仕事もない。だから、たまっていた片付けなどをしていた。
すぐ、次の仕事が来る。「はい」といって彼は立ち上がり、そして同じように淡々と仕事をはじめたものだ。
彼に会う前の私は「期限が近づかないとやる気が盛り上がってこない人間」だった。今から考えるといろいろなことが思い浮かぶ。たとえば、それまではどうも自分の人生でありながら他人の人生だったような気がするし、何をやっているのか判らないところもあったようだ。
他人に動かされる人生も悪くはない。その方が気が楽と言えば楽だ。
でも、いつもそれでは何となく自分の人生が自分のもののような感じがしない。ちょっとだけでも自分の時間を自分のものにするためには、自分で自分のことを決めた方が良いだろう。
そこで、私も彼をまねしてみることにした。
つづく
【脱線】
ところで世の中には複雑なことをする人もいる。今朝、テレビを見ていたらゴア前副大統領のノーベル平和賞受賞の演説が流れていた。自分の家は月30万円の電気(日本の電気料金では約100万円)を使っているのに、それでいて「あなたには何ができますか?」と呼びかけている。ずいぶん、図々しい人だと感心するが、この性質は精神病では解離性同一性障害(かつての二重人格)と言い、ヨーロッパ系の人間に特有である。かつて植民地を圧迫し、そこに住んでいるアジア人を殺戮しながら「人権」を説いた人たちだから。でも、そのテレビではいかにも裕福そうな日本人のタレントが「是非、地球人はゴアさんの映画を見た方がよい。強く勧める」と言っていた。どうやら誇り高き日本人にも解離性同一性障害が見られるようになってきたらしい。
ところで、私は大丈夫かな??