「紙のリサイクル」や「割り箸を使わないこと」が森林を守ると信じている人がおられる。とても変なことだ。それも環境を大切にしている人に多い。

 

 少し考えれば間違いがわかることだから、おそらくはよほど情報が偏っていて判断を狂わせているのだろう。それとももしかすると日本には森林がないと錯覚しているのかも知れない。

 

 非常に簡単な計算で判ることだ。データは製紙工業界のものを主として利用させてもらった。

 

 まず日本人が一年に使っている紙は、約3000万トンで世界の第三位だ。下の表に紙を使う量の多い国をリストしたが、アメリカは人口も多く一人あたりの消費量も多いから8000万トンも使うが、中国は人口は多いがまだ所得が低いからあまり紙は使っていない。

 

 紙の消費量.jpg

 

 ところで、紙は樹木からパルプを経て作られる。だから、当然だが、自分の国に森林があれば、それを使ってパルプを作ることができる。

 

 日本は3000万トンの内、やく半分の1500万トンをリサイクルしているから、残りの1500万トンが新しいパルプを使う。その80%が外国の森林、20%が日本の森林から取る。

 

 つまり毎年1200万トンを外国の森林に頼っているのだ。そして一口に「外国」と言っても先進国から1100万トン、発展途上国から100万トンというところだ。

 

 結局、日本の紙は外国、それも先進国の森林からもらっている。なぜ、日本人は日本の森林からパルプを取らないのだろうか?

 

 日本は先進国の中でも国土の中で森林の割合が多く68%もある。そんな国は北欧のスウェーデン、フィンランドぐらいであり、環境でよく日本がまねしたがるドイツの森林率は31%似すぎない。

 

 日本の森林率.jpg

 

 ところが、樹木の消費量に対する生産量ということになると、スウェーデンが実に4.2倍、ドイツが0.55倍なのに対して、日本はたった0.21倍である。樹木を使うことは使うが自分の国のものはあまり使っていないことが判る。

 

森林利用率Image2.jpg

 

 そして最後のデータがリサイクルである。

 

 古紙回収率.jpg

 

 スウェーデンが63%、ドイツが74%、そして日本は66%だ。これらから何が浮かび上がってくるだろうか?

 

 スウェーデンは森林王国で、国土の67%が森林だからその利用に注力している。そして木材やパルプを大量に生産し、自分たちが使う量の4倍も生産していて、さらにリサイクルも進めている。

 

 ドイツは森林面積はそれほど無いけれど、日本の2倍程度の比率で森林を利用し、その上でリサイクルも進めている。

 

 日本は自分の国に森林が多いのに森林を利用していない。外国の森林から樹木を買ってきて日本で大量に使用し、そしてそれをリサイクルしている。その一方では日本の森林は利用されずに放置され、多くの樹木が使われることなく枯れていく。

 

 日本人は一体、何を考えているのだろうか?

 

 本当に森林が大切と思うなら、自分の国の森林を育て、利用しなければ意味がない。森林というのはただ量だけがあればよいというものではなく、生活の場の近くにあってそこに動物が住み、空気を浄化し、海との循環をするから意味がある。

 

 また、日本の森林をうち捨てて、外国、それも森林量が増えている先進国の森林の樹木を買ってきて、それをリサイクルしても世界の森林の減少を食い止めることはまったくできない。

 

 だから日本で紙のリサイクルなどをしても支離滅裂で環境とはまったく関係が無い。単に古紙の相場を安定させて製紙会社がさらに紙を製造するのを手伝っているようなものだ。

 

 もう一度、振り返りたい。

 

 紙のリサイクルをしている人の目的はなんだろうか?それを子供に教えている人の意図はなんだろうか?森林を守るのにも役にたたず、ものを大切にする心も育たず、太陽の光の恵みを適切に活用するのを拒否し、石油を使ってリサイクルをして何になるのだろうか?

 

 何をしているの?リサイクルの全部が間違っている訳ではないけれど、どこまで行くの?と私は聞きたい。

 

つづく