動物に興味のある人なら多くの人が気がついていたことだが、「体の大きさが大きい方がどうも寿命が長い」という傾向がある。これを整理した学者の一人にザッハーという人がいる。
このグラフは1959年のものだが、横軸に動物の体重、縦軸に寿命をとり、いろいろな動物の種類の体重と寿命をプロットしてみると、少しばらついているもののおおよそ直線に乗る。
つまり体重が1グラムぐらいの小さな動物は数年しか生きることが出来ないけれど、人間のように60キログラムぐらいあると20年ほどは生きることができる。
さらに、グラフで10の6乗(10の5乗と7乗の間)は1000000と0が6つだから100万グラム、つまりグラムをキログラムに直すのに1000で割るので1000キログラム、つまり1トンという重さだ。
大型のゾウは数トンあるからだいたい、ゾウとかクジラなどの動物と思ったらよいだろう。そのような大型動物は40年も生きる。
私はこのようなグラフやデータを見ると、まずは職業的(私の職業としての物理や材料学)なことが気になり、次に人生的なことに思いをはせる。
物理的には「なぜ体重に比例するのだろうか?」ということだ。寿命のような「時間」は「大きさ=寸法」に比例するなら納得できそうだが、重さに比例するとなると少し違和感がある。でも、そんな直感は私の間違いかも知れない。重たいものは動きが鈍いからそれだけ寿命が長いのかなと思ったりする。
人生的には、体が重くても軽くても平等な一つの命なのに、重たい動物が長い寿命というのは不公平だなと感じる。生きている時にも体が小さいとビクビクしていたりして何かと不利なのに寿命まで短いとは・・・とつい同情してしまう。
私は少しノイローゼなのかも知れない。「たたみいわし」とか「ちりめんじゃこ」という食料を前にするとどうも元気がなくなる。小さいけれど奪われた多くの命が私の前に並んでいる。シジミのみそ汁もそうだ。蛤なら一つの命でよいが、シジミとなると大勢になる。
人間というもの命をあやめなければ生きていけない哀しい存在だが、少しでも少ない命をいただくとすると少しでも大きい動物からいただくと命の個数は減る・・・
それとは別に、このグラフだけを見ていると何となくおかしい。グラフの線は肉食動物の上に引かれているが、その下には齧歯類とか有袋類がいて、線の上には霊長類やヒトがプロットされている。
何となく「体重の他に、何かあるな」と感じさせるグラフではある。
ともかくザッハーは丹念に動物の体重と寿命を調べ、グラフにプロットし、線を引き、その線が次の方程式で整理できることを世に知らせたのだから、彼は偉い。
L=3*W(0,2乗)
ここでLは寿命(年)でWは体重である。