みんなで力を合わせて仕事をしようという時に、社長がジキジキに社員一人一人に伝えたり、荷物を運ぶ時にお客さんに直接、運べば一番、速い。これを「ジキジキ型」とする。情報は最短になるけれど、労力が大変になる。
それでは社長が副社長に、副社長が専務にというように「クチコミ型」で伝達するとどうだろうか?その場合の図を下に示した。
この場合は確かに労力は楽になるが、時間がかかって仕方がない。そして人間が聞いたことを伝える時には悪意が無くても、その人の希望が少しずつ入ってしまう。
社長が「来月から給料を1割下げる」と言っても、最後の人は「今月から給料が2割上がるらしい」と聞くことだってある。
そこで、労力も少なくて済み、速く伝わる方法がないかということで「支店型」が考案される。本社があって、社長が支店長に伝え、支店長から社員にという具合である。
この手の方法と似ているのが、「八つ手」や「大麻」である。込み入っていて少しわかりにくいけれど、茎からの枝がまず葉や実に連結されていて、そこから放射状に葉や実が伸びている。
でも植物が試行錯誤を繰り返していると、どうも「支店型」はそれほど効率が良くないことが判ってきた。そこでさらに工夫すると、ある形が浮かび上がってきたのである。それを「枝葉型」としてみよう。
これまで説明してきた「ジキジキ型」、「クチコミ型」、「支店型」、それに「枝葉型」を一つの表にまとめ、情報を伝えたり荷物を運んだりするときの「全体の長さ」と「一人一人に到達する平均長さ」をまとめてみた。
実に素晴らしい!!
ジキジキ型では労力はかかるが、一人一人との距離は3.4と短い。反対にクチコミ型では労力は90だが、距離が45.5(四捨五入して46)と長すぎる。
支店型が一番良いかと思ったら、労力(全長)は半分程度に減ったが、クチコミ型に比べれば見劣りがするし、平均的な距離も4.3と今ひとつだ。
それに比べると「枝葉型」はどうだ!労力はクチコミ型とおなじ90で、社員との距離も理想的な3.4と比べて3.7とほとんどおなじではないか!
これは素晴らしいというので、多くの生物がこの方式を採用している。私たちの目に付くものとして「普通の葉っぱ」があるし、目に見えないものでは脳神経がある。
植物の葉は出来るだけ効率的に栄養分を補給したり、光合成された物質を移動したりするので、その形には命をかけている。そして約6億年の進化の中で試行錯誤を繰り返し、「みんなで一緒にやる時にはどうしたらよいか」という結論を得ているのだ。
ところで書いている内に、反省してしまう。
私は長く研究生活を送ってきたので、自分が考えていることが間違っていることをよく知っている。自然は奥が深く、どう見ても事実だと思うことが簡単に覆された経験を思い出す。
生物、特に形のある多細胞生物は6億年の歴史を持つ。人間は頭脳という知性を持つが、やはり長い年限の試行錯誤にはかなわないように思う。その点で自然に学ぶところが多い。
自然はリサイクルをしていない。そんなことが私をリサイクル嫌いにさせているのかも知れない。