第三の質問

「バイオエタノールは地球温暖化を防ぐことができるのですか?」

 

「これも難しい質問だから、少しジックリと話しましょう。

 

 今から50年ほど前までの農業というのは、ほとんど人の手でやっていた。江戸時代には水を引くのも自然の力を利用していたけれど、50年ぐらい前には灌漑用の水などはポンプを使うようになっていたけれど、まだ農業は機械化されていなかったのだ。

 

 このような農業を「伝統的な方法による農業」と言うけれど、作物が育つときには人間の力の他はほとんど使わないから、エネルギーで言えば、1キロカロリーのエネルギーを使って10キロカロリーのエネルギーを持つ作物を作っていたんだね。

 

 もし、現在でも伝統的な方法でトウモロコシを作っていれば、作るときに使うエネルギーが1で、トウモロコシのエネルギーが10だから、差し引き9のエネルギーを得することになる。

 

 だからトウモロコシからエタノールを作り、それを燃やすと9の分だけは二酸化炭素が出ないことになる。

 

 つまり、トウモロコシが育つときに太陽の光を使って、空気中の二酸化炭素を吸収してそれが実になる。そしてその実からエタノールを作って、それを燃やせばまた二酸化炭素がでるけれど、それは少し前の空気から採った二酸化炭素なので、いったんトウモロコシの中に貯めてまたそれを空中に出すということになる。

 

 だから京都議定書という地球温暖化の条約ではこれを「カーボンニュートラル」と言っているんだ。日本語で言えば「二酸化炭素が変わらない」というような意味だ。

 

 ところが本当は間違っている。

 

 現代の農業というのはね、機械化が進み、農薬や肥料を使うので、作物を得るときに昔のように太陽の光より石油を多く使っている。

 

 たとえば日本のお米の場合、今ではカロリーで計算して、お米の5倍の石油を使っていると言われている。その代わり、灌漑用水はかなり自由に使えるし、田畑の殺菌も出来るので、1年に平均して15回も田畑を利用することが出来るのだ。

 

 農業に石油を使うというのは働く人が楽になるというだけではない。畑を休ませないで毎年使ったり、作物の収量を多くすることができる。それが良いんだね。

 

 だいたい平均して日本の畑は30キロカロリーの石油を入れて、10キロカロリーの作物を採っているし、アメリカのような大規模な農業でも10キロカロリーの石油で10キロカロリーの作物を作っている。

 

 だから、10キロカロリーの石油を使って10キロカロリーのトウモロコシを作り、それをもう一度、エタノールにして10キロカロリーを採るなら最初から、石油を燃やすのと二酸化炭素の出る量はほとんど同じになる。

 

 この話を聞くと不思議に思うだろう?

 

 君たちも「バイオエタノールは二酸化炭素を出さないから地球温暖化を防ぐことができる」と聞いてきたのだろう?そしてそれを言ったのはもしかすると、NHKのようなちゃんとした放送局だったり、偉い学者の先生だったり、つまり大人だろうと思う。

 

 でも、残念ながらそれはウソなのだ。

 

 ちゃんとした放送局や学者の先生がウソをつくということを、若い君達に言いたくないけれど、残念ながら本当なんだ。視聴率を上げたいからとか、お役所に逆らえないからとか、お金儲けのためというようなことで、ウソをつくのだよ。

 

 特に環境問題はウソが多いんだ。

 

 だから、本当のことは学校の先生によく聞いた方が良い。学校の先生も文部科学省に「こう言いなさい」と言われることもあるけれど、先生は立派で生徒のことを考えておられるから、大丈夫だ。

 

 ともかく、今日は「現代的な農業でトウモロコシを作り、それからバイオエタノールを製造した場合には、すでに作物を作るときにたくさんの石油を使っているから、温暖化を防ぐことにはならない」ということをしっかり理解できればそれでよいと思う。

 

つづく