今年の夏はとても暑かった。関東と中部で40.8℃を記録し、これまで日本の最高気温のレコードホルダーだった山形市を残念がらせた。そして多くの人が暑さによる熱中症で亡くなられたり、体調を崩した人はおそらくその数十倍はおられただろう。

 

 50年ぐらい前から、いわゆる「異常気象」が増えてきた。これについては世界気象機構という国連の機関も注意を促していて、熱波、寒冷、干ばつなどが頻繁に起こる。50年ぐらい前は寒冷化の時期だったので、寒冷化と関係して論じられ、今は温暖化が疑われている。

 

 でも、世界気象機構は「異常気象が温暖化と関係しているとは言えない」とこれも注意を促している。「なんでも温暖化」という風潮に釘を刺している恰好だ。

 

 長期的な見地や人生観あるいは自然観との関係では難しいことが多いが、まずは単純に考えたい。

 

1) 気温は以前より少し高くなっている。

2) 二酸化炭素を減らしてもすぐには解決できない。

3) 昔より都市構造や生活スタイルが違うから、昔と同じ生活は危ない。

 

 気温が以前より少し高くなっていることは確かだ。1980年からの27年間は上がっている。その前は30年間、寒冷化していたから、そろそろ変化するかも知れないが、ともかく現在は気温が高くなっている。

 

 仮に気温が高いのが二酸化炭素の影響でも、それを減らしたからと言って気温が下がるわけではない。まして日本は世界でも二酸化炭素の排出量が少ないので、日本が頑張っても意味がない。個人はさらに関係ない。

 

 現在、都市はビルだらけになり、海には薄く油が浮いている。そのために、自然によって気温の調整をする余裕が減っているので、気温の上がり下がりが大きいのは、いわば当たり前である。だから、昔と違う。

 

 環境が大切であることは確かだが、自分でできないことはできないから、自衛しなければならない。ミスリードしたら犠牲が増えるだけだ。

 

 今年はもう間に合わないかも知れないが、来年ももし暑かったら次のことを記憶しておいて春先から夏の予定を変えておいた方が良い。

 

1) 現在の夏の暑さは昔とは違う。

2) 昔と同じ生活を夏にするのは止めた方が良い。

3) 暑い時には第一に涼しいところに移動することだ。

4) 水を補給するのは大切だが、それは補助的な手段である。

 

 「暑いのを我慢する」「それが根性だ」などと言っていると、この夏に犠牲になった児童のように命を失ってしまう。まずは夏の高校野球を止めるか、もしくはドームでやることを勧める。夏の甲子園は象徴的だから、ドームで涼しく試合をすれば、気象の変化に対して何をしなければならないのか判ると思う。

 

 個人的には、できるだけ涼しいところに移動することだ。このことと水の補給については生物の活動、熱力学などの知識がいるので、簡単に説明しておく。

 

 人間のように活動するものは、活動するために熱を発生する。特別なものを除いて、熱を出さないで活動できるものは、生物、無生物にかかわらずほとんどいない。

 

 そして、単に熱を発生するだけではだめで、それを「捨てる」ことが必須である。つまり、

1) 活動すると熱が出る。

2) その熱を捨てなければならない。

ということだ。

 

 人間の体温は37℃近くであるが、これは体が劣化しないために必要な温度で、あまり高くなると体を作っている材料などが破壊される。でもあまり体温が低いと周囲に熱を捨てられないので、活動ができない。だから37℃ぐらいになっている。

 

 人間の体温が37℃であるということは、人間が誕生して以来の気温が33℃ぐらいが最高だったからだ。もし40℃の世界なら45℃ぐらいの体温の生物が栄える。つまり、38℃以上の気温の中では人間は「活動してはいけない」ということだが、生きているだけでも活動していることになるので、やはり38℃以上は危険だ。

 

 とにもかくにも35℃に近くなったら、暑いところを避けて活動量を落とすことだ。

 

 ところで38℃を超えて熱を捨てるにはどうしたらよいだろうか?一つの方法は「部分的に冷やす」ということだ。たとえば頭は常に25ワットぐらいの電球と同じ熱を出しているので、頭を冷やす。そうすれば少なくとも頭の熱は奪うことができる。冷たいタオルでも何でも良い。

 

 次に水を飲むことだ。これは熱を捨てる時に「温度の高いところから低いところに熱が移動する」ということを利用するのではなく、「蒸発したら熱を奪う」という潜熱を利用するタイプだ。だから、「暑い時には水分を補給せよ」と言われる。

 

 人間は温度と共に、いろいろなことを調整しなければ生きてはいけない。その一つが「体の水分量」である。あまり少なくなると汗が出にくくなり、蒸発量が減って体温が上がることになる。つまり、熱中症である。

 

 暑い時に水分を飲むのは正しい。でも、水分を飲めば死なないかというとそうではない。水分を飲む理由を理解しておくことだ。暑い時には湿度が高いことが多い。体から水分を飛ばすためには周囲の湿度が低くなければならない。

 

 「クーラーをつけると温度が低くなるより、空気が乾燥するから涼しい」というのはこのことで、体の表面から水分が蒸発し、潜熱で体温が下がるのである。

 

 それではなぜ、熱中症で死ぬ人がいるのだろうか? 私はニュースを見て可哀想に思った。熱中症で死んだ人の中に、「暑いところで我慢するのが正しい」「昔からクーラーの無いところで過ごしてきたのだから」「水を飲んでいれば大丈夫」と勘違いしていた人はいないだろうか?

 

 また、昔から夏休みには体育館で運動をするという習慣があり、そのまま続けていないだろうか? それが原因して亡くなった子供はいないだろうか?

 

 お役所やマスメディアが「水を飲みなさい」とばかり言っているわけではないが、湿度が高ければ水を飲むだけでは危ない。まずは「涼しいところに移動する」「夏の行事を減らす」ということが大切だと私は思う。

 

 人間の活動量が多すぎて二酸化炭素の排出も多い。資源も使いすぎている。そのせいで、夏が暑くなるのかも知れない。だから、暑い日は仕事を休み、ゆっくり水風呂にでも入って、夕涼みしたらどうだろうか? そんな日は普段、気がつかない思わぬ発見もあるものだ。

 

つづく