さて年金の構造に話を進めることにする。

 

 平成16年の日本の年金の構造を下に示した。おおよそ7000万人が年金に加入している。国民の6割にあたる。内訳は民間のサラリーマンと公務員が3700万人、専業主婦が1100万人、自営業などの人が2200万人である。

 

 

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(このデータは社会保険庁のホームページ( 公的年金制度の体系)と数値は厚生労働省年金局年金財政ホームページから採った。)

 

教育を受けている最中の人が約5分の12600万人、60歳以上の人が約4分の1の3000万人なので、総人口からもともと年金を支払うのに適していない人の合計を引くと7000万人だ。だから全体の辻褄も合っている。

 

 日本社会はまだ発展途上だから、人によって収入に差がある。将来は誰でもほぼ同じ収入になるだろうけれど、それには人間の心や社会体制がずいぶん進歩しなければならないだろう。

 

 仕事をしている時に年金を十分に払う余裕があり、大きな会社などに勤めることができれば、基礎部分と厚生年金、そして3階部分と言われる。3階までもらえる幸運な人は600万人である。だいたい受給できる人の11人に一人ということだ。

 

 現役の時には仕事に応じて給料が決まっても仕方がないが、せめて65才以上になれば働いていないのだから、同じ年金をもらう方が良いように思う。でもそれも現代の日本人のレベルではダメのようだ。

 

 つまり、給料や年金がもらいたいので一所懸命、働く。労働それ自体を人生の一つとして楽しんだり、日本国民の義務・共同作業として仕事に頑張るというところまで行かない。

 

だから、馬の前にニンジンを吊すように「個人の得」にならなければ働かないという悲しい状況なのである。複雑な年金制度は設計側の未熟さや、管理側の社会保険庁などのまずさもあるが、根底には日本人の人生観にあるように思われる。

 

今、若者が減り、年金制度が崩壊すると言われている。どのように崩壊するのか、そもそも年金はどのように運用されているのか?などについて話を進めるが、その時、基礎的な考え方として「65才以上の人をすべて平等とするのではなく、ある程度の格差をつける」ということを前提としたい。

 

 つづく