電車に乗って席が空くと自動的に座ってしまう。階段の横にエスカレーターがあると階段を上ると「損」をしたようなする気がする。そして指定席を買うにはお金がいるので自由席より指定席の方が「得」のような気がする。
本当だろうか? アメリカ軍が行った次のような研究がある。
兵士を、寝るグループ、座るグループ、そして立っているグループの3つに分けて、それぞれ一週間交替にさせる。その時の体の変化を分析して行軍や軍隊の行動の参考にするというものである。
その結果は非常の面白い。立っているグループの兵士が寝るグループに加わって1日半、その兵士の尿中に出てくるカルシウムの濃度が約2倍になる。立っているとき兵士の体は「カルシウムを大切にする」ということだったが、わずか1日半、寝ているだけで体は「骨はどうも要らなくなったのだな」と判断してカルシウムを放出するのである。
「若い頃、よく歩いておかないと歳を取ってから寝たきりになる」とよく言われるが、その通りなのだ。尿の中のカルシウムが増えるということは骨の成分が減ることだから、だんだん、足が弱くなり、強い運動をすれば肋骨すら危ない。
それもたった1日半、寝ていると、カルシウムを減らすのである。人間の体は待ったなしであることがわかる。
毎日、どのぐらい立ったり歩いたりしなければならないか、このデータから見ると、時間では3時間、歩く歩数では約1万歩だ。万歩計という名前は正しい。家庭の奥さんは家事をするのでほぼ3時間は毎日、立っているだろう。だから比較的安全だ。
誰もが寝たきりになるのは避けたいだろう。「座らないこと」「歩くこと」がそれを救う。だから、エスカレーターを利用したり、指定席券を買う方のは人生としては「損」である。
サラリーマンで地方に住んでいる人は家の前から職場まで車。職場ではパソコン・・・という場合はさらに危ない。通勤の人でも駅ではエスカレーターを使い、比較的、電車が空いているのでいつも座って「楽に」通勤している人が多いがこれも危ない。
現代の社会は技術が進歩して、楽と言えば楽だが、私たちの持っている「人間としての機能」を何とかして奪おうと思っているように見える。せっかく足があるのにエスカレーター、腕の筋肉があるのに自動で開くドアーや窓、なにからなにまでボーッとして生活すればすむようになってきた。
手足だけではない。最近ではパソコンが漢字を出してくれるし、計算もしてくれる。人間の頭もなにもしなくて良いようになって来つつある。何もしなくて良いなら生きていても仕方がない。
そう、私たちの体、腕の筋肉、脚力、そして頭までもが「不要品」になってきているのだ。現代の技術は人間の機能を代替えして、すっかりリストラされた現代人は「廃人」へ向かって一直線である。
現代の技術は「廃人技術」なのである。
もし、腕の筋肉を使って自分でできる事はやり、脚力を使って階段を上り、少しはパソコンを使わずに手計算すれば、体も頭もぼけない。いや、ぼけないように考えて生活してはいけない。ボケを防ぐことが問題ではない。今は、現代人は「人間としての楽しみ」を感ぜずに生きている。
つづく