桜花散り、列消える。
キャンパスに新緑が芽吹く頃、すでに桜は散って花びらだけが風に舞っている。でもキャンパスはその感傷に浸るほど寂しくはない。新入生が入ってくるからである。
大学に入学した学生は同じ行動をする。12時頃になると一斉に食堂に集まり、長い長い列を作る。学バスもこの時期は乗ることができない。
どこでもいつの世でも新入生、新入社員というのはそういうものであり、その被害を受けるベテランも「俺も・・・だったなあ」と許す。
新緑が美しくなる頃、潮が引くように列は毎日のように短くなり、やがて消滅する。数日前にはあれほどの雑踏、走り回る学生、部活動に誘う奇妙なダンス・・・それがすっかり陰を潜めている。
まだ、昼下がりなのにキャンパスはひっそりと静まりかえる。
期待と不安、宙に浮いたような4月。そしてホームシックにかかる頃に連休が来て、郷里に飛んで帰る学生たち。
うれしいだろう。この1ヶ月は夢のようだったが、これから楽しさがあり、苦しみがあり、悩みが来る。青春時代とはやたらに苦しいものだ。それが自らの発展の途上、成長の苦しみであることを知るよしもない。
青春時代とはやたらと反抗したくなるものだ。静かにしろと言われれば話し、走るなといわれればひっくり返る。それも何もかも、自分というものができていく産みの苦しみの一つである。
人生はどこかに苦しみがくる。何も苦しまず極楽とんぼのようにこの人生を過ごしたいが、神様はそれを許してはくれない。人生がいつも大学に入学した時の4月のようにふわふわしたものであったら・・・
連休が終わったらどういう顔をして彼らは帰ってくるだろうか?そう、毎年、少し大人になり、少し悩みが増え、そして5月病にかかるのだ。
つづく