― 幸せな国に生まれました ―

 

 日本は素晴らしい国です。美しい国土、四季折々の景色、美味しい水・・・なにをとっても世界でも珍しいぐらい「環境」に恵まれています。そんな自然の中に住んでいる私たちですが、さらに最近、もっと恵まれてきました。

 下の図は世界各国の「所得(一人あたりのGDP)」と「平均寿命」の関係を整理したものですが、日本人は世界で一番、長生きをする国民で、しかも所得もトップグループです。オリンピックで言えば、寿命が金メダル、所得は決勝進出グループといったところでしょうか。

 よく、こんなに恵まれた国に生まれたものです。

 自分がどの国に生まれるか、どんな時に生まれるかは自分の思うとおりにはなりません。気がついてみたら家族の中にいたというのが本当のところです。もしかしたら、自分はネズミに生まれて屋根裏を走り回っていたか、動物実験であえない最後を遂げていたかも知れません。

 だから人間に生まれただけでずいぶん恵まれていますが、その上、日本、それも戦争の無い時代の日本に生まれたのですから、こんなに幸せなことはありません。親に感謝。

 私はそれほど「心がけ」が良い人間ではないので、なぜ私がこんなに恵まれているのか時々、不思議に思うことがあります。私はスポーツ好きでマラソンなどもよく見ますが、エチオピアのマラソンランナーを見ていますとみんな立派です。それなのに所得は100分の1、寿命も50才に満たないのです。そんなに違って良いのか?と辛い気持ちになります。

 日本人全体の平均寿命が長いからといって、自分の命はいつ終わるかわかりませんし、それは神様が決めてくださることですが、ともかく家族も親戚も、そして友人も長く生きることができることは本当に幸せなことと言わざるを得ません。

 そんな日本に住んでいるのに、まだ私たちは時に不安になり、恵まれていないと嘆き、そして人間関係で苦しみます。どうしてこれだけ恵まれているのに、まだ不満があるのでしょうか?

 寿命の短い国、所得の低い国の人・・・それは世界のほとんどの国ですが・・・その人達から見ると「日本人はうらやましい」と感じています。でも私たちは日本の中に住んでいるので、スーパーに食糧が山積みされているのは当たり前、友人に会いに行こうと思えばいつでも電車に乗れる、そんなことは当たり前だと錯覚します。

 そこで次に、スーパーのレジが少し遅いとか、電車が少し遅れたとかで腹が立ちます。つまり、人間は「今」を当然のことと錯覚し、少しでも自分の思うとおりにならないと腹を立てるというところがあります。それもお金持ちほど腹を立てるので、私たち日本人は腹を立てやすいのです。

 でもそれではせっかく寿命が金メダル、所得が決勝進出でも幸福な人生を送ることはできません。2大会連続して金メダルを取れないと言い、準決勝しか出られなかったと嘆いているようなものです。世界は自分一人ではありません。むしろ自分一人なら寂しくて仕方がないでしょう。

 身の回りには多くの人がいます。世界には65億人の人がいて、それぞれ夢を持ち、希望をもち、安心して生活できることを祈っています。平均寿命が50才の国でも、給料が月に1万円の国でも、金メダルを取りたいという希望は同じなのです。

 私は、どうも根性もあまり良くないし行いも感心したものではない・・・いつも反省しています。だから何とか健康で毎日が過ごせる自分は極上の幸せの中にいるような感じがします。これ以上、恵まれたらバチが当たるような気もするのです。

おわり