―投票は国民の意思ではなかった!―
最近、世の中が急激に変化するので、報道を見ているとビックリすることが多い。軽い話を3回ばかりアップする。今回はその(3)。最後は首相に登場していただく。
郵政民営化法案が参議院で否決され、その日の内に衆議院が解散された。首相は「政府案を国会が否決したので、国民に是非を聞きたい」と言った。郵政民営化法案は重要法案だから、主権在民なら国民に是非を問うのは当然である。
もちろん選挙は郵政法案だけをみるのではないが、郵政民営化が改革の大きな一つであることも間違いない。だからおおよそは判断材料としては間違いないだろう。
そして選挙は首相の大勝利となった。国民は「貴重な一票」を投票して郵政民営化賛成の候補者だけを立てた自民党に投票した。
ところがその翌日からマスコミは「投票結果は国民の意思ではない」とのキャンペーンを張りだした。「小泉劇場に国民は幻惑された」というのである。そして小泉首相がイタリアオペラの歌手と歌っているところや劇的な解散の様子をテレビで映し出した。
テレビはさらに報道する。もともと自民党がこんなに勝つのはおかしいのだ。マスコミが行った選挙の事前の取材ではそれほど自民党の支持は多くなかった。第一、参議院で否決されたから衆議院を解散するのはおかしい。そんなことをする小泉は変人だということでテレビは「変人首相」というタイトルをつける。
国民が選んだに等しい首相に「変人」というレッテルを貼るマスコミも相当な自信だが、一方においては自由自在に権力者を非難することができる社会も良いのかも知れない。でもこれでは投票した国民は立つ瀬がない。
選挙当日の朝、私はとある都市で四大紙の朝刊を見ていた。そこには「国民の意思を投票で示そう!」とどの新聞も一致して呼びかけていた。その記事を読んで、私は不快になった。「新聞社の方が読者より偉いのだろうか?なぜ、現在の日本で新聞社が読者に投票を呼びかけなければならないのだろうか?」と不思議に思ったのである。
新聞は読者を指導しなくてもよい。今日が選挙日であること、どこに行けば選挙ができるかなどの事実を報道すればよい。
選挙は国民のものである。投票するのもしないのも国民が決めるし、誰に投票するか、何党を支持するのかも国民の判断だ。それを新聞が「投票に行きましょう」と呼びかけるのはどういうことだろうか?
不思議に思っていたら、案の定、その翌々日には「国民が自由な意志で投票したのではなく、小泉首相にマジックをかけられ、夢遊病のように投票した」との報道が始まったのだった。郵政民営化に反対した自民党議員の選挙区に女性を起用したのも魔術だという。
選挙は国民のものではない、マスコミが予想し、マスコミが投票を呼びかけ、マスコミがその結果を評価するものである、予想が外れたのは国民が魔法にかかって自分の意志とは違う投票をしたからだと番組は叫んでいた。
今回の選挙で、日本の政治は裏が無く、政策で議論し、国民が意思を示すという方向に進んだと思っていたが、まだ守旧派は残っていたのだ。
おわり