― 植民地、その後 ―

 

 靖国の問題は、歴史認識の問題と切り離すことはできないということを先回、すこし書きました。そして日本とアジアの「歴史認識」という点で一番、大切なのは「植民地」です。

 今では考えられませんが、コロンブスやバスコダ・ガマが活躍した大航海時代から第二次世界大戦まで、世界は「強いものが弱い国を支配する」というのが普通でした。と言うより、人類が始まって以来、世界のほとんどの地域は「暴力の強いものが弱い者を支配して良い」という事になっていました。

 技術が進歩した17世紀から、その原則は世界に蔓延して、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリスの4カ国で世界のほとんどの国の富を巻き上げてきたのです。

 下の世界地図はこのホームページで掲載しているものと同じですが、赤く塗ったところが「植民地を持った国」、灰色のところが「植民地かそれと同様の辛い思いをした国」、そして日本と僅かの国がそのどちらでも無い国と色分けしたものです。

 世界でたった4カ国が150カ国近くの国を支配してそこからの富を独占したのですから酷いものです。私はクラシック音楽や近代ヨーロッパ絵画、それに城郭など近代のヨーロッパ文化が好きなのですが、その文化の後ろに植民地があり、その人達のうめき声が聞こえることで、素直に楽しめないのです。

 ところで、日本やアメリカが「植民地を持った国」になっていないのは、これが19世紀の状態を描いたからで、20世紀前半となると、日本は満州、朝鮮、台湾を植民地にし、アメリカはフィリピンを領有していました。いわば「植民地を持つのが遅れた国」が競って植民地を作った時代だったのです。

 でも、第二次世界大戦が終わり、インドネシア、アフリカ、インドなどで激しい独立戦争が起こり、多くの血が流れ、今では植民地はほとんど無くなりました。まだ核兵器も軍艦もありますが、公に武力ではよその国を支配できなくなっただけでも人間は進歩したのでしょう。

 長い間、植民地だった国はその期間、ずっと宗主国に搾取され、呻吟していました。その影響はその当時の人が辛い思いをしただけではなく、今でも尾を引いていて、かつて植民地であった国はほとんどが低い所得にあえいでいます。

 上のグラフは世界銀行のもので複雑ですが、横軸が人口、縦軸が一人あたりの所得を示しています。棒が高い方がお金持ちで、その幅が広い方がその人口が多いということです。

 これを見ると、一見して裕福な国がアメリカ、日本、ヨーロッパだけで、その人口はたった6億人でしかなく、世界全体の10分の1であることが判ります。それ以外の国は日本とは比較にならないほど貧乏な生活をしているのです。

 なぜ、アメリカ、日本、ヨーロッパとその他の国との差が、これほどついたのでしょうか?それは「植民地を持ったか、植民地になったか?」の差だと思います。日本がアジアの国であるにも拘わらず、アジア、アフリカ、南アメリカの中で唯一、所得が高いのは、日露戦争での日本海海戦で勝利したからです。

 力の時代には力が必要であり、また力は正義でした。そこで日本は武器を作り、訓練し、多くの犠牲を伴いながらも独立し、そして今日の繁栄があるのです。その途中に行き過ぎもありましたが、ともかく靖国の英霊たちが今の私たちの幸福を、死を持ってかなえてくれたのです。

 だから私は靖国の英霊達を守りたいと思います。

 でも、日本が繁栄するために犠牲になった国があるのです。第二次世界大戦の時には日本は中国、フィリピン、マレー半島、インドネシア、ビルマなどを占領しました。それらの国は戦争で大きな痛手を受け、そして日本に併合されていた朝鮮(韓国と北朝鮮)と台湾はそれより長い期間、日本の植民地として被害を受けたのです。

 幸い、韓国と台湾は戦後、その国の人たちの努力で日本人の3分の1程度の所得のところにあり、世界的には裕福な国の仲間入りをしています。本当によかったと思いますし、その人たちの並々ならぬ努力に敬服したいと思います。

 でも、日本が併合した国で、北朝鮮だけはまだ豊かではありません。それどころか世界でも貧乏な国の一つですし、食料も自由にはならないと報道されています。私は心が痛みます。もし日本が北朝鮮を併合していなかったら、もし朝鮮動乱が起こっていなかったら、北朝鮮はもっともっと豊かな国になっていたでしょう。責任は私たちにあります。

 だから、日本が北朝鮮を非難できる立場にはありません。確かに拉致被害者を一日も早く帰して欲しいのは人情ですし、是非、そうして欲しいのですが、北朝鮮が日本人を拉致したからと言って、日本が北朝鮮にしてきたことが消える訳ではないのです。

 私は、拉致被害者を帰してもらうには日本がまず過去の間違いを償うことを約束しなければならないと思います。それが一番、簡単で自分でできることです。そして、一刻も早く横田めぐみさんと拉致被害者を返してもらうために「北朝鮮の人が日本人と同じ生活レベルになるまで、日本は北朝鮮を応援する」ということを公言すべきだと思うのです。

 朝鮮の人はプライドが高いので、ただ日本からお金をもらうということはしないかも知れません。その場合は、
1) 復興資金がいるなら無利子でお貸しし、
2) 技術が必要なら無償で提供し、
3) できるだけ朝鮮の生産品を買い、
4) 英語と平行してハングル語を日本の学校で学ばせる
はどうでしょうか。

 韓国はすでにかなりの力があり、日本人が一人あたり一年でUS$36,000、韓国がUS$9,000ですから、第一目標としては北朝鮮が韓国並みになることが良いと思います。北朝鮮の人口は約2000万人です。

 そこで一つの提案をしたいと思います。日本の人口が1億2000万人ですから、日本人が自分の所得を減らして、北朝鮮と韓国の人が同じになるように北朝鮮に復興資金を出したいと思います。それを計算すると、日本人の平均所得は96%になりますが、それぐらいはこれまで日本が北朝鮮にしてきたことを考えれば当然の償いのように思います。

 具体的には「北朝鮮税」というのを作り、国民、一人あたり4%の税金を納める。北朝鮮が復興資金が必要だと言えば、それをそっくり差し上げたい。

 日本人は自分が被害を受けた過去は忘れても、相手に対して義理を守り、約束を守り、そして償いをすることができる立派な民族であって欲しい、と私は願います。

おわり