学会はなぜお金を払わないと出席できないのか?


 学会に出席しようとすると、そこまで行く旅費はかかるし、おまけに学会参加費というのを支払わされる。確かにデラックスな会場で学会を催すことが多くなった昨今、学会に参加費が必要なのも分からないでもない。

 でも、果たしてそうだろうか?

 学会はその分野の学問を究めたい、もしくはディスカッションしたいという人たちが任意に集まって楽しく議論するところだ。そこに、学会員ではない人が来ることは大変、歓迎するべき事で、お金を取るような関係には無いはずである。でも浮き世のことだから、会場費ぐらいはお出し頂いても良いが、せいぜい、その範囲だろう。

 学会によっては、発表を学会員に限っているところも多い。さらに発表者全員がその学会に所属であることを求めるところもある。発表者はその新事実を明らかにしたメンバーであり、それが特定の学会に所属している事自体が偶然である。もし発表者が全員、学会員でなければならないとするとそれは学問的には詐欺になる。

 私は一度、小さな学会を運営したことがある。学会員はそれなりの会費を分担して頂いたが、学会に来られる人には1000円を頂いた。学会の会場代のプラス分はその程度だったからだ。むしろ、その学会の学問分野を拡大するためには学会に来ていただく非学会員は私にとってはありがたい存在だった。

 学会の批判をしたついでに、もう一言、言いたい。学会の「会員増強活動」の意味が理解できない。学会は産業とは違うので、学会員が多い方がよいということはない。学問はそこに参加する人が多いからその学問の価値が高くなるということもない。学問はそれ自体が価値であり、数ではない。数が多いことは嬉しいことではあるが、それは結果であって勧誘すべき事ではない。特に、「会員増強月間なので、会員1人あたり3人は確保しましょう。」などという呼びかけがくると気持ち悪い。

 大学は常にオープンである。何時なんどきに研究室にどなたが来られても、教授会に見知らぬ方が来られてもOKである。国立大学は税金で運営しているので、国民にはオープンであり、私立大学も補助金や税法上の優遇措置からオープンが原則である。

 ところが得てして大学も閉鎖的になる。教授会はもちろん、卒業研究発表会も「関係者以外立ち入り禁止」を主張される先生が出現する。人間は公的なお金をもらっていても、それをもらい続けると自分のもののようになり、自分にお金を払っていただいている人まで排斥したくなるようだ。

 学問は自由でありたい。この世の中で、少しは損得と関係のない世界があっても良いように思う。