温暖化と企業


 環境関係で最近、流行の言葉は「自分でもできること」です。でも自分で出来ることは限界があります。政治がやること、自治体が世話をすること、そして企業が行うことです。企業も「環境に優しい企業イメージ」などと、ある意味では社会を騙すようなことは長続きしません。事実、企業の環境への努力は学生でも「どうせイメージを作ろうとしているだけ」と冷ややかです。

 そんな活動をするなら、それより具体的に市民が温暖化に役立つことをするサポートをしたらどうでしょうか?それには建築や土木関係の会社の役割が大きいのですが、建築土木は公共工事が一段落してとても苦しい経営をされています。この際、出直すつもりで日本の将来を考えるのも新しい展開になると思います。それには、まず、

1) 舗装をはがすこと、都市に森林を散在させること

2) 都市空間をコンクリートで固めないこと

3) 建築リサイクル法をやめること

4) ヒートアイランド現象にならないように分散型電源を止めて、都市には電気でエネルギーを供給すること

5) 動物と共存できる空間を作ること

6) 下水道の整備を止めて下水が地下にしみこむようにすること

などがあります。ずいぶん、これからの仕事が多いことに気がつくでしょう。そのうちのいくつかはこれまで間違った方向に来たものを修正するのですが、どうせ、ある程度の年限が立てば、やりかえるのですから、今のうち、つまり日本に経済力のあるうちにもう一度「日本列島改造」をして、今度こそ豊かな自然に恵まれた国土を取り戻してもらいたいものです。

 電気会社や自動車会社は「買い換え需要」に期待せず、「長く使ってくれること」に開発の主力をおいてもらいたいものです。地球温暖化防止を推進する公的機関が下の図のような省エネルギーを勧めています。エアコンを使うなら今持っているエアコン(普及型)を捨てて、最新鋭の省エネルギータイプのエアコンを購入した方がよいという感じです。エアコンを買うこと自体は地球を温暖化するので、この公的機関が推奨するはずはないので、買い換えの指針と思います。

日本環境協会 HPより

 自動車を買うときにガソリン消費も気になりますが、それよりなにより先立つもの、つまり購入する時に支払うお金が気になります。そして環境という面では自動車を作る時と使う時の合計が問題で、ガソリン消費だけが環境負荷になるのではないことは、誰でも知っているのですが、環境運動家や環境の専門家だけは知らないようです。でも最近、それが指摘されるので、この公的機関も購入費用も併せて公表しています。

日本環境協会HPより

 エアコンを買って10年間使った場合の電気代の計算と購入時の販売価格を示しています。購入時の価格は最高性能のものが約2倍ですが、省エネルギータイプなので10年間では約14万円もお得ということです。このような計算が出てきたのは良いことです。これまで買い換えを勧めるために電気代だけを示していた頃に比べると大変な進歩であるとともに、この機関が公的機関だからいっそう、そのように配慮したのでしょう。

 でも少し問題もあります。一年間の標準的な家庭の電気代は7.8万円とされていますが、10年間で46万円というと1年間に4.6万円になりますから、一つの家庭の電気代全部の約半分がエアコン1台で使っているという計算になります。たぶん、毎日つけっぱなしにした計算と思います。もし節約して使い、真夏と真冬だけならこの4分の1程度になるでしょう。そうすると14万円の差は3万円程度となり、結果は逆転します。

 でも私はあまりこのような論争はしたくありません。日本はエアコンがなくてもある程度生活が出来ますし、その方が精神的にも肉体的にも良いので、あまりエアコンを最新鋭に買い換えたりするのが気が向かないのです。上のグラフを著者なら次のように解釈します。・・・今、持っているエアコンは省エネタイプではないが何とか使える。そして節約すれば10年で電気代は10万円程度にしかならない。それに対して最高性能のものと買うと買うだけで14万円かかるし、せっかく買ったのだから使いたくなるだろう。そうなると10年で32万円にもなる・・・

 いずれにしても下の表で判るように、家電製品の多くはその耐久年数だけ使われずに約半分程度の年限で捨てられます。あまり新品で捨てられるので、ついリサイクルしたくなりますが、よく考えればもっと長く使えるようにして欲しいものです。

 企業は本当に生活に役立ち、日本の気候に合い、地球が温暖化しないような生活空間を作ることができないのでしょうか?密閉住宅、ガラス張りの部屋、前面舗装、空かない窓、樹木のない庭・・・そしてつけっぱなしのエアコン・・・それから「地球温暖化防止」「環境に配慮した企業」と続きます。どうでしょうか??

 著者も研究者であるとともに消費者でもありますが、少し電気を喰っても故障せず、スタイルも洗練されていて、長く使える電気製品や自動車が良いと思います。もし故障しても自分で直せるように設計されていて、いつも壊れるところは修繕の方法が描いてあり、部品がコンビニエンスストアーで帰るようなものであればなおさら良いと思います。

 リサイクルするために部品の共通化を進めているところもありますが、リサイクルよりそのもの自体を長く使えるように部品を共通化しておいて欲しいとおもいます。バブルまではいざ知らず、現在ではすでにそのように考える消費者は多いのです。もし家電製品や自動車がそのような設計になれば、みんなもっと落ち着いた生活を取り戻すことになるでしょう。

 企業は売り上げを増やさないと収益が上がりません。売り上げを増やすためにはどうしても物を売らなければならず、それが温暖化に悪い影響があるとしても、自分の会社がつぶれるかも知れないのですから環境とか温暖化とか言っていられないのです。かくして日本中の企業が心の中と行動が分裂し、それを受けて政府や自治体、そしてその他の公的機関もどうしたらよいか判らないのが現状でしょう。

 フランスはある時に「バカンス」という制度を法律で作りました。それが導入された当時、企業は猛反対したものです。まだ休暇というものが少ない時代に夏休みを2週間程度取らないと行けないと決められたのですから、それはビックリしたのです。日本でも「フランスは2週間もバカンスというのがあるらしい」と話題になったものです。それから数10年経ち、フランスが特にダメな国になったわけでもなく、現在ではフランス企業の経営者もこのバカンスを受け入れて経営をしています。

 日本もそろそろ年間休暇を分散して取り、それによって従業員が積極的に精神的活動が出来るように企業も配慮したらどうでしょうか?夏期休暇はかなり多くなってきましたが、まだ「今年は景気が悪いから長く休暇を取る」というように仕事が中心で設定されているところがあります。それを逆転して休暇の方を重視するようにするのです。但し休暇の取り方も強制的ではなく、取る方の希望が聞けるようにした方がよいと思います。

 社会はフランスがバカンスを導入した頃に比較して格段に多様化し、多くの人がそれぞれの生活を持つようになりました。現代では一斉休暇という考え方自体はもう必要がないと思われます。企業の社会的責任ということが言われるようになって久しいですが、温暖化という環境問題を契機にして、これまでの企業のあり方をもう一度見直すのも良い機会と思います。