温暖化と個人の生活


 地球温暖化を防止するというとほとんど100%の人が、「二酸化炭素を出さない」「タクシーに乗らない」「省エネルギーにつとめる」・・・などを思い出し、その行為の具体的な成果は「地球の温暖化を少しでも食い止める」ということと思われます。

 でも、京都議定書を達成しても20年間で温暖化ガスをわずか0.777%しか減少しませんし、その期間に発展途上国が正常に成長したら50%も増大します。いくら精神的活動としても50%増えるのに対して、0.777%ではそれが気休めに過ぎないとか自己満足に過ぎないと言われても反論は出来ないでしょう。

 まず、次のことを確認したいと思います。

1) 日本人がいくら個人的に頑張っても地球の温暖化を阻止できないし、その行為はあまりに自己満足的になる。

2) 日本は温暖化によって被害をほとんど受けない。

 つまり地球の温暖化を阻止する必要はないということです。絶対に地球を温暖化させて行けなければ、自分の給料を減らして物質使用量やエネルギー消費量を減らさなければなりませんが、貯金をすれば銀行から企業へお金が移り、企業が自分より効率的にお金を使いますし、税金に採られれば道路や公共施設の投資や官僚の給料になるだけです。またタンス預金していてもそのお金を死ぬまで使わなければよいのですが、もしどこかで使ったら二酸化炭素を出す時期が違うだけで自分が人生で出す二酸化炭素の総量は変わりません。いずれも自己満足に過ぎないのです。

 地球温暖化や環境保全の取り組むとしてはこのようなことは、今までの考え方と大きく異なりますので、納得するのに時間が掛かると思います。でもこの際、地球温暖化は防止するものではなく、克服するべきものだとはっきり意識するのも大切でしょう。日本人たる個人が地球温暖化の対策としてすべきことは次の2点です。

1) 暑さ寒さに強い体を作っておくこと(あまりエアコンに頼らないという意味では、電気の使用量が減るし、体は自然の変化になれるので良い)

2) 家の作りを四季折々に活用できるようにすること。

 まず暑さ寒さに強い体を考えてみましょう。昔は冬の朝は寒さに震え、冷たい水で手を洗いました。ですから脳卒中も多く、若い女性はあかぎれで真っ赤にふくらんだ醜い手になりました。今はタイマーを使って起きる前に部屋の温度は暖かくしておくことが出来ますし、水は瞬間湯沸かし器を使います。夏になると多くの部屋はクーラーが効いているのはもちろん、少し前までは電車にはクーラーが付いていませんでしたが今ではクーラーの付いていない電車はほとんどありません。著者は大学に勤務しているが講義室はすべてクーラーが装備されていて一昔前には考えられないほどです。

 そういえば、少し前にある非常勤講師の先生が真夏に背広を着て環境の講義をしておられました。江戸時代の生活に真鍋という講義内容でしたが、教室はクーラーががんがん効いていて、学生は涼しげに半分眠りながら講義を聴いていました。先生も真夏に背広を着て汗一つかいてはおられません。私たちは言うこととやることがいくら乖離していても不思議とは感じない世界にいるのだとつくづく思ったものでした。

 そこで、まず私たちの老後を守り、私値の子供を守るためには、冬はある程度寒いのを我慢し、夏は出来るだけクーラーをかけないで生活をする訓練を少しずつ始めることだということになります。そのために最初にやらなければならないことは、それにあった衣服をそろえ、家を改造することです。

 これまで、「地球の温暖化を阻止しよう」と考えていましたので、暑さ寒さを我慢するために衣服を買うのは矛盾しているので出来ませんでした。その理由は、もともと衣服を買うというのは物質の生産量を高めると言うことですから、それは二酸化炭素を発生させることになります。でも地球温暖化を阻止せず、自分のみを守るなら問題はありません。冬に暖かく、夏涼しい格好をし、住まいもそのようにします。そうするととりあえずストーブやエアコン、そしてクーラーをつける癖がなくなるという第一段階が達成されます。


Photo by (c)Tomo.Yun

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 実は人間の体は1万年前のDNAで構成されていますから、心地よいというのは冬にはわずかな暖炉の火、夏は通り過ぎる風が良いということになります。決してエアコンの風は人間にとって心地よくないもので、冬はセーターを着込み、少しだけ暖を採って生活をし、夏は断固、クーラーをつけないようにします。半袖を着て汗をかいたら団扇で扇ぎ、夕暮れになるとさっと風呂かシャワーを浴びて枝豆でビールを飲みます。

 この場合も、地球温暖化を阻止しようとすると、風呂に入ったりシャワーを浴びたりすることはよけいに二酸化炭素が出るから問題になります。でもそんなに考えを突き詰めると、何もしない方がよい、いっそ死んだ方が良いと言うことになって、人生はたちまち暗くなります。ですから「地球温暖化を阻止するのではなく、地球が温暖化するからそれに対して負けないように準備をする」、そのように方針を変更しなければならないのです。

おわり