温暖化は食糧増大

 地球温暖化の危機をあおる環境運動家を石川五右衛門と一緒にするのは、石川五右衛門か環境運動家が怒るかも知れませんが、地球温暖化で一儲けしようとするのはあまり関心が出来ません。特に地球が温暖化するとひどいことが起こるという本を読みますと、地球が温暖化して良いこともあるのですが、それは一切触れていないと言うことが判ります。

 その一つが「温暖化すると病気が流行る」ということで、マラリアなどがその例として挙げられています。実はマラリアは1950年代にその撲滅に国連がDDTを使用したために先進国ではほとんど見られなくなりました。そして先進国のマラリアが退治されたので、それを開発途上国に使おうとしたら、その途端、「先進国にはマラリアがなくなったのだから、もうDDTを使う必要がない」と言うことになり、DDTが禁止されたのです。

 その結果、発展途上国はマラリアを撲滅することが出来ず、今でも毎年100-200万人がマラリアで死亡しているとされています。確かにDDTはある程度環境を汚染しますが、先進国の人は自分たちがマラリアの危険性がなくなると、発展途上国の人がいくら死んでもほとんど意に介さないのです。

 このようにマラリアに関しては汚れた歴史があるものですから、あまり詳細に議論できません。その結果、地球が温暖化するとマラリアが蔓延するという話だけが先行しています。既にDDTを使ってマラリアを退治しても癌などの発病が見られないことは歴史的に実証されていますから、たとえ温暖化によってマラリアが増えてもそれは問題がないのです。

 それより直接的には気温が上がるので熱中症などが増えます。事実、熱中症で死亡する人の数は1990年代より急激に増加しています。夏が暑くなってきた1994年頃には熱中症という病気自体があまり知られていなかったこと、熱中症を防ぐには適当な水分を補給することなどがなされず、結果的に多くの犠牲者を出しました。

 でもこの熱中症の犠牲者の増加を地球温暖化と直接的に結びつけるのは問題です。第一に熱中症で犠牲になった人の多くが65歳以上のお年寄りで、お年寄りの数が増えたことが原因しています。また、熱中症は温暖化というよりむしろ都市のヒートアイランド現象が問題で、日本の夏の気温はほとんど変化がないのに都市だけが熱帯夜が増えたことに起因しています。従って熱中症が増えたから地球温暖化には気をつけなければならないという議論は対策を間違い得る可能性があります。

 傷には絆創膏が必要でも、足に傷が出来たときに手に絆創膏を貼っても血は止まらないように、温暖化と熱中症が関係あるようでも実は都市の設計に問題があり、温暖化自体は関係ないとするといくら温暖化対策をしても熱中症で犠牲になる人は減らないと言うことになります。

 このように熱中症のような病気もありますが、普通は気温が高くなると多くの病気は減ります。例えば、脳卒中、脳梗塞などの虚血性心疾患と呼ばれる一群の病気は下の図に示したように平均気温が高くなると明確に減少します。沖縄の人が虚血性心疾患が少ないのはその食生活にもあると言われていますが、気温が高い方が少ないことは確かです。この他、インフルエンザなども減少します。


 ところで温暖化が私たちの生活を良くすることでは作物の収穫が上がるのが最も大きいでしょう。冷害のほとんどは冷夏や気温の低下が原因ですし、豊作の年は夏が暑いのが特徴です。このように農作物の収量が気温によることはよく知られていますが、下の図に示すように稲作の出来もほぼ温度に一致しています。

 農作物も生物なら、魚も生物ですからやはり気温や水温が高いほど魚の捕れる量も増えます。下の図は太平洋で捕れるカタクチイワシの漁獲量を示したものですが、この鰯の漁獲量は周期的に変化します。そこで太平洋の水温を一緒のグラフに描くと、水温が高くなると鰯が良く捕れることが判ります。1910年から1940年まで海水温が徐々に高くなると鰯の漁獲も増えてきます。


 そして1940年から1970年にかけて水温が低下するとイワシも捕れなくなり、この頃は盛んに「乱獲によってイワシが捕れなくなり、イワシも高級魚になった」と言われたものです。この30年間は気温も下降気味で冷害による農作物の被害もありました。それからわずか30年ですから、温暖化温暖化と騒ぐのも少しタイミングが早い気もします。いずれにしても1980年代よりまた太平洋の気温が高くなるとイワシの漁獲量が増大し始め、最近ではまた多くのイワシが捕れるようになりました。

 少し学問的ですが、横軸に太平洋の水温の逆数、縦軸に漁獲高の対数を採ると上の図のように見事な直線になります。このプロットはアレニウス・プロットといって科学の世界では多用されるのですが、此が直線に乗ると言うことはこの二つに強い関係があることが予想されます。気温や水温が高くなると食糧が多く採れるので良いとも言えます。

 また北海道やシベリアなどでは既に気温が多少高くなってきたので、冷害が少なくなり、ある作物の北限の緯度も高くなって大変喜んでいる人たちもおられます。温暖化で被害を受ける人のことを心配することは大切ですが、それまで苦しい生活をしていた人が楽になることにも注目した方がよいと思います。

 もっと単純には雪の被害が少なくなってきたことも挙げられます。上の図は積雪の予想図で100年後は雪の被害がほとんどなくなるとも予想されています。雪の景色を見て楽しむのは雪のない地方に住む人で、豪雪地帯ですと冬は雪に閉じこめられ、お年寄りでも少しの病気をしたときでも屋根の雪下ろしをしなければならず、それは辛いものです。もし温暖化によって雪下ろしの回数が減ればそれで楽になる人は多いでしょう。

むやみに人を脅かさず、明るく行きたいものです。

終わり