冬と夏の温暖化

 京都議定書が地球温暖化にはあまり役に立たないことが判りました。つまりこのことをもう少しはっきり言うと、「人間の活動による地球温暖化はあまり感心しないが、そうかといって発展途上国の発展を止めることは出来ないし、先進国自体も足並みが揃わず、京都議定書を締結した国である日本人も二酸化炭素の削減をすることが出来ないのだから、地球温暖化は避けられないと認めよう」というのがまず第一です。

 第二に、「地球温暖化が避けられないのなら、せめて自分、自分の家族、そして日本人はその被害を最小限にしたい」ということです。このような考え方は世界的にはそれほど珍しくなく、世界の温暖化会議でも温暖化を防止するという議論と、温暖化したときに困らないように対策を採るという議論は平衡してあります。日本の新聞だけを見ていると世界中が温暖化を防止しようとしているように見えますが、そんなことはありません。

 そこでまず温暖化の影響を見てみましょう。政府も環境運動家も温暖化を防止したいという願いが強く、温暖化の悪い面だけを強調しますが、本当に温暖化はどのような影響があるのでしょうか?

 まず、日本の気温の変化を見てみます。下の図に気象庁のデータを示しましたが1900年以来、日本の気温も徐々に高くなってきています。そして特に最近の10年間は気温の上昇が顕著です。例えば、2004年の日本の年平均地上気温の平年差は+1.01℃で、1898年の統計開始以来2番目に高い値となりました。

 気象では平年との差を問題にすることが多いのですが、平年との差がプラス側に大きかった年を順番にあげますと、1990年(+1.04℃)、2004年(+1.01℃)、1998年(+0.98℃)、1994年(+0.82℃)、 1999年(+0.76℃)、2002年(+0.53℃)、2000年(+0.52℃)、1979年(+0.50℃)となっています。

 今から100年前の1900年もかなり暑い年で、2004年の平均より暑いのですから、慎重に考えなければなりませんが、少しずつ暑くなっていることは確かです。でも日本は四季があり、気温の上昇も夏と冬ではかなり違うのです。

 まず夏の気温ですが、下の図に示しましたように今から80年前の1920年までは寒かったのですが、それ以後あまり変化していません。つまり「夏が暑い」というのは最近のことではなく、かなり昔からです。このことについては都市のヒートアイランド現象との関係があり、少し解説が必要ですので、まず日本全体の夏の気温はあまり変わっていないと言うことを知ってください。このこと自体は事実ですから。

 それに対して日本の冬はこの100年間で二段階かけて暑くなっています。まず第一の変化は太平洋戦争が終わった後の1945年から1950年にかけて急激に気温が高くなっています。この時の気温差はわずか3年程度で1.5℃ですから相当なものです。また第二回目は1985年から1990年にかけてで、このときもわずか4年程度で2℃近く上昇しています。

 確かに少し前の日本の冬は、周期的に大豪雪があり、冬の朝にはガラスにびっしりと氷の結晶が見られ、外に出ると霜柱を踏んだものでした。それから考えるとかなり最近では暖かい感じがします。それよりもこのグラフには興味ある事実が見られます。

 

 まず第一に、なぜ1950年頃と、1990年頃に急に変化したかということです。もし温暖化が二酸化炭素などの温暖化ガスの量によるのでしたら、そんなに急激に増加しないはずですし、急激に気温が上昇した後は徐々に気温が低下してきます。このように地球全体の気温が二酸化炭素の影響としても個別の変化は必ずしも同じではないこと、私たちの感覚はさらに部分的であることです。

 第二に一回目の変化では1.5℃、二回目では2℃も変化していますし、その期間も5年以下です。これに対して恐れられている21世紀の地球温暖化では、100年間に3℃から8℃と予想されています。地球全体の気温ですからその影響は大きいのですが、それが個人に与える影響としては日本の冬の気温変化の方が大きいということです。それで安心して良いと言うことではなく、数℃程度の気温の変化はそれほど大きな影響を個人や地域に与えるものではないということでしょう。

 これらをまとめますと、下の表にあるように平均的にはこの100年に1℃程度気温が上昇していますが、主として冬の気温が上がっていることが判ります。

終わり