教育と環境

 リサイクルをどう子供に教えるか?

 子どもに教育する時に、「リサイクルは環境に良い」と教えるか、「リサイクルはゴミの形を変えること」と教えるのかは難しいところである。昔は古い物をその家庭で使うということで物を大切にする心を育てることができたが、現代では日常生活の中に衣食住に関するものを自分で作ることが少ないので「物を大切にする」ということを教えるのはとても難しい。リサイクルについても子供自らがリサイクルするわけではないので、単に回収箱に入れればすむという他人任せの感覚を子供に教えることにもなりかねない。
 図 49はペットボトルのリサイクルに伴うペットボトルの生産量の増大を示している。ペットボトルのリサイクルはもともとペットボトルの増産に対する社会の反発を弱めるという政治的な理由もあったが、それはそれとして子供にペットボトルのリサイクルを勧めるかとなると問題を生じる。


図 49 ペットボトルのリサイクルと生産量

また「国策と教育」という問題でも難しい課題がある。「循環型社会の構築」は国策でもあるので、子どもに伝えることは必要だが、その内容と方法が難しい。その一つの例として、国家が戦争をしている時に、大人は戦争に勝つために全力を尽くすべきと考えられるが、子供に対して戦争を美化したり、敵国を鬼のように教えることが正しいかは同一ではない。環境も戦争と同じように重要であるが、国策には国策の理由があり、教育現場ではもう少し広い視野が必要だろう。

 

 子供の環境教育の一例

 例えば、著者は子供用の環境の参考書になるように直接的な施策ではなく、もう少し長い時間軸をもった視点を提供している。その例を2,3示した。

       
図 50 水が汚れる原因

 水が汚れる原因として「自分の体を綺麗にすれば水はそれだけ汚れる」こと、現代の家庭においては水道の水は家庭で消費する水の1%程度にしか過ぎず、風呂、水洗トイレ、炊事、そして洗濯にほとんどの水道水を使っていること、その水の浄化に多くの石油を使うこと、そして最後に、水を綺麗にするためには太陽の力が必要なことを説明する。


図 51 有害物質の発生原

 第二に有害物質の発生源は工場などであると教えられてきている子供も多く、工場などが排出する場合もあるが、多くの有害物質は私たちの生活を便利にするために使用している電池や蛍光灯、テレビなどに使用されていること、それがやがて廃棄物になって環境を破壊していることを教える。何でも他人の責任にせずに自分のものとして環境を受け止める判断力を育てることも重要であろう。


図 52 アフリカ人、50年前の日本人、今の日本人のものの消費量の相対比較

 図 52に現代のアフリカ人、1950年の日本人、そして現代の日本人が使っている物質量の相対的比較を示し、環境問題は我々自身があまりに多くの物質を使うようになったことに原因していることを視覚的に示した。または横軸がエネルギー消費量の推移であり、急激なエネルギーの消費拡大が起こっていることを示す。このようなことから環境問題の本質は我々先進国の人が経済的成長に重きをおいて物質やエネルギー、そして便利になるための有害物質などを使うことに原因があることを教える。しかし、「だから原始的生活・・・」ということにならないように、私たちの文化的生活と環境を調和して行くにはそれなりの覚悟と技術や思想が必要であることを強調することも同時に必要である。


図 53 日本の一次エネルギーの推移

 

第十一回 終わり