地球規模の環境破壊(その1)

地球規模の環境破壊

 地球規模の環境破壊としては、地球温暖化、オゾン層の破壊、砂漠の増大、土壌の流出、森林の後退、水の喪失などが注目されている。いずれも「何が環境破壊か?」「何が原因か?」などきわめて難しい問題であり、特に地球規模の環境破壊の影響を受ける次世代の人のためには現世代の利害とは切り離して考える必要がある。

 地球温暖化

 地表の気温は上昇傾向にあり、これを「地球温暖化」というが地球が温暖化しているかどうかは明らかではない。正しくは地表の気温の上昇であると考えられている。図 31は20世紀の北半球の気温の変化を示したものであるが、この100年間で約1℃程度上昇している。


図 31 地球の気温の変化

地表の気温は主として太陽からの入力エネルギーと地球から宇宙空間への放射エネルギーの差し引きによって決まっており、太陽から短波長の光を受けて加熱され、宇宙空間に長波長の光を出して冷却される。この出入りのエネルギーが一定なら地球は一定の気温に保たれるが、仮に太陽からのエネルギーより地表から宇宙へ放熱されるエネルギーが小さいと気温が上昇する。


図 32 地球への入力と宇宙への出力

 地表からの放射光は大気中の物質(水、二酸化炭素、炭化水素ガスなど)に一部、吸収される。従って、地表からの蒸発水分、化石燃料からの二酸化炭素、そして天然ガス田と輸送中の炭化水素ガスが温暖化の原因になる。


図 33 温暖化要因物質と吸収波長

 地表の気温が増大していること、空気中の二酸化炭素が増加していることから、化石燃料を燃やすことによって二酸化炭素が増大し、気温の上昇が起こり、それが原因して異常気象や海面の上昇、生態系の変化があると心配されている。
ところで短期的な政策などは別にして、地球温暖化を正しく理解するためには、1)そもそも地球温暖化は環境破壊か? 2)人為的な温暖化なら環境破壊であり同じ温暖化でも自然の変化なら環境破壊ではないか? 3)地球温暖化の原因は二酸化炭素か? の3つについて考えておく必要がある。
 現在の地球の気温は生物には低すぎるので、人口密度や動植物分布は熱帯に偏している。従って、地球温暖化は寒冷地の作物の増産などメリットも大きい。もちろん、海水に浮いている氷が溶けても水面は変化しない。マスコミは変化そのものを破壊とし、破壊されているところを部分的に報道しているので、わたし達がその錯覚から逃れるのは難しい。
つまり、現在の日本で「環境破壊」という用語は「現状が変わる」という意味で使用されており、「最適な気温は?」ということは研究されていない。つまり「良い方向に変化する」場合も「変化するから破壊」と言われていることに注意する必要がある。
 また、これまでの地球の気温の急激な変化はいずれも太陽活動、地軸、海洋の変化などとされている。最近の数十万年は12万年ごとに氷期と間氷期が交互に訪れており、現在の間氷期はすでに寒冷化に向かっている。また気温の変化率も現在の変化率に近い。


図 34 最近、15万年の気温の変化

 また生物が爆発的に増えた5億5千万年前からの気温の変化をみると現在は第二氷河期に当たっており、生物が繁栄した時期の気温は現在より15℃程度高かったと考えられる。


図 35 6億年の気温の変化

 このように「人間が化石燃料を燃やしていない時代」でも大きな気温の変化があったことは教えておく必要がある。また、現在の気温の変化は二酸化炭素によると即断できない。太陽活動との関係が深いことがすでに指摘されており、また今後も何らかの環境の「変化」を「破壊」と定義して人為的な操作を行うことが果たしてわたし達の子孫にとっても正解であるかを考えてみる必要もある。


図 36 太陽風の強さと地球の気温

 日本としては二酸化炭素による地球温暖化の防止に向けて京都議定書を締結に努力した国であることから、国としては京都議定書を遵守すべく様々な努力をする必要がある。しかし京都議定書は様々な矛盾を含んでおり、目的に合致した成果を上げることは至難の業である。すなわち
1) 地球温暖化の原因と考えられる二酸化炭素は、地球温暖化のすべての要因ではなく一部であること(図 37)、
2) 京都議定書に参加している国が全世界の約60%の二酸化炭素を排出する国であること(図 38)、
3) 京都議定書はその55%の国が参加すれば発効すること(実際には約60%)
などから日本を含む各国が京都議定書を遵守しても気温の上昇を抑制するのは僅かに0.1℃程度であり、地球温暖化を防ぐことができないということである。


図 37 地球温暖化の寄与率


図 38 国別二酸化炭素排出量

 特に日本の場合、経済活動を圧迫せずに二酸化炭素の排出量を1990年を基準として6%減少させるのは至難の業であり、おそらく最終的な計算は工夫がなされると考えられる。しかし国民の中には京都議定書を守ればそれが地球温暖化に役立つと考えている人もいるから、かなりがっかりすると予想される。

 

第七回 終わり