リサイクルと物質循環(その2)

国土とリサイクル

これまで環境問題は環境庁や経産省などが中心となって施策を行ってきたが、環境とはまさに国土の問題であり、日本の国土の将来という点からリサイクルと環境を考えてみる。もともと環境問題を経済や生産、廃棄物、さらには厚生的な側面から考えるのではなく、むしろ国土そのものが環境だから国土から考えるべきなのである。


「国土」という面では第一回の図2において「廃棄物に分類されていない物質」をどのように捉え、どのように考えるかがもっとも重要な課題である。産業は基本的にフローの世界であるが、国土は蓄積を問題としなければならないからである。毎年、10億トン程度の「廃棄物」が国土に蓄積している。国土は次第に変貌していくがその行き先が国家や国民のために良い結果になるように考えていかなければならないだろう。その一つの考え方として「資源に強い新しい日本国土」という視点がある。日本は工業資源が少ないが、現在は高度な工業技術を駆使して外貨を稼ぎ、それで外国から資源を購入している。つまり現代の日本は次々と外国の高品位資源を日本国土に取り入れているのだから、これを100年程度の時間を見て日本国土を資源に強い国土に変貌させると良いと考えている。そのためには国土のグランドプランを作成し、人工鉱山の建設、都市構造の大幅改造などを行う必要があろう。
その道筋を簡単に示す。まず現在、廃棄物は分別して生ゴミなどの燃えにくいものを焼却している。しかし本来はペットボトルなどのプラスチック・トレーなどは空間があり、高カロリー物質なので焼却の補助をするには最適である。しかし、これらのものが除かれているために図9に見られるように燃焼が困難になる。ゴミにプラスチックなどを含めば3000カロリー以上になるので高い温度で焼却が可能であり、発電効率も上がる。焼却するにしても分別しない方がよい。




図9 廃棄物の焼却と発熱

 図10に示すように年間約20億トンの資源は廃棄物になるが、それを分別せずにまとめて焼却することによって発電し、且つ有用資源を人工鉱山に蓄積し、無害の土の成分で国土の拡大を行う方法がある。焼却しないものは次章でも整理するが、「汚いもの」であることから、どうしても焼却プロセスを静脈系に入れることが重要である。すでに技術的にも純酸素高温焼却の方法があり、
1) 煙突がなく、従って「煙」が出ない。
2) すべてを鉱石の品質にするので「焼却灰」が出ない
3) 有害物もすべて分解するか鉱石の品質にするので有害物が出ない
4) 従って、二酸化炭素以外は何も出ないので廃棄物貯蔵所がいらない
5) 廃棄物のエネルギーから熱と電気を作って工場は自分自身で動く。
というものでまだ普遍的な方法になるためには技術的にもコスト的にも問題があるが、将来、すべての廃棄物に利用されれば日本の廃棄物問題は一気に解決されると考えられる。
 次に物質循環には「時空性」があり、適当な時間で適当な空間を設定しなければならない。現在の社会体制や技術を考慮すると、「日本全国から集めて瞬時にリサイクルする」というのは時空性に関する検討が不足しており、「日本全体から集めるならリサイクルした資源を人工鉱山に蓄積しておくのが良い」という可能性がある。



図 10 長期間物質リサイクルの基本的概念

 日本国土には主要工業資源である石油、石炭、鉄鉱石、銅鉱石、貴金属資源などがない。一方では膨大な資源を購入して製品にしている。従って、今のような消費時代に大量の資源を日本の国土に人工鉱山として蓄積すれば、それは日本の子孫のために大きな贈り物となるだろう。リサイクルには循環の時間設定というものがある。現在のように「今、使ったものをすぐ循環する」のではなく、すべてを焼却して元素や酸化物に戻し、100年後に循環するのが望ましい。



図 11 人工鉱山と国土改造

 先に「景気と生産」「生産と環境」という二つの要請を「リサイクル」では解決しないことを示したが、もしこのリサイクルをもう少し長い時間をとり、廃棄物を全量焼却して元素レベルで長期のリサイクルをすれば解決すると考えられる。

 国際化と物質循環

 循環法はその目的として「環境の改善」と「資源の節約」を掲げているが、物質循環が原理的に環境の改善と資源の節約につながるかという基本問題を別にしても、工業製品、農業製品の国際化の進む中で現実に物質循環を日本国内だけでできるかというきわめて困難な問題がある。特に家電製品などで著しいが、図 12に示すように自動車においても日本1,300万トンの自動車が生産され、海外に590万トンが輸出、国内には760万トンが販売される。回収される自動車は660万トンでそのうち、315万トンがリサイクルされている。



図 12 自動車の製造から廃棄まで

 現代の日本の自動車はきわめて高品質であり工業技術の粋を集めていることから、中古材料やリサイクル材料を使用せず、ほぼ100%天然資源を使用する。また輸出先の諸外国はリサイクルをしていないところが多く、資源は回収できない。このように製品の国際化が現実のものである以上、リサイクルの根本思想を雰囲気ではなく論理的に詰める必要がある。
 また廃棄物の越境を禁じたバーゼル条約があり、日本も批准しているが、ほとんどの工業製品は有害物質を含んでおり、製品の段階では輸入が可能であるが、廃棄物は輸出できない。つまり図 13に示すように資源的に見ると「入ることはできるが出ることはできない」という状況にある。これも工業製品の国際化と物質循環で未検討な問題である。



図 13 バーゼル条約と国際的物質循環

 資源の保全という点ではさらにリサイクル問題との論理的関係を整備する必要がある。国際的には資源の枯渇が懸念されることから各国は資源の獲得へと政策を進めており、その中で日本がリサイクルによって資源を節約することができても、世界の資源の節約に貢献することはできない。より現実的な政策が求められる。 
                                               

第二回 終わり