12.  主力の栄養を増やして速度を上げる

 

 自然の空気の組成を下の表に示したが、窒素と酸素がほとんどで、二酸化炭素が少し、それに二酸化硫黄などは公害をもたらす物であるから低く抑えられている。

 これに対して火力発電所からの排ガスは下の少し大きな表に示したが、空気を取り込んで石油や石炭を燃やすので、燃焼に関係の無い窒素が60%、酸素は石油や石炭の中の炭素と水素に反応して、二酸化炭素が14%、水が30%、それに酸素の残りが3%である。

 一方、微量物質の方は、生物中のイオウから来る二酸化硫黄が10g、HClとダストが0.15g、HFが0.06g(それぞれm3N当たり)である。石油は動物の死骸、石炭は植物の死骸だからすべて生物由来であり、火力発電所で燃焼させても、野山で細菌が分解しても同じ結果になる。

 この表にはバナジウムが無いから石炭由来と考えられる。石油ができた時代の海生生物は還元剤としてバナジウムを使っていたものが多かった。今のホヤやナマコであり、わたしはバナジウムを使う生物を食べるのが好きだが、一般的には「バナジウムは毒」とされている。

 「火力発電所の排ガスは汚い」というのは環境を考える時には適切な表現ではない。なぜなら、火力発電所の排ガスと野山で自然に朽ちていく樹木から出るガスとは同じだからである。人間にとって火力発電所の排ガスが「有毒」なのは「量が多い」からであって、そのもの自体が毒であるということとは違う。

 「量が多ければ障害が出る」というのを毒物として排斥すると、醤油、味噌など何から何まで排斥しなければならない。「1日に体重と同じ量を1年間、取り続けると肝臓が肥大した」などという動物実験を持ってきて、「だからこれは毒物だ」というのが長い間のマスコミの判断だった。

 判断というよりマスコミが排斥したいと思った「読者がいかにも毒物と思いたがっている化合物」を毒物に仕立て上げるテクニックだったのである。もっと酷い場合があり、たとえばAという化合物を毒物に仕立てようと決定すると、多くの動物を用意して「障害が出るまで投与する」という方法を採る。そうすると「どれかの動物に、どれくらいかの量で障害が出る」のは確実で、ほぼどんな化合物も毒物になる。

 そのような経験を長くした日本人は、何が毒物か栄養かがまったく判らなくなっている。「火力発電所の排ガス」と聞いただけで「毒物だから処理をしなければならない」と論理が直結するが、そうではない。量に因る。

 一方、二酸化炭素は主力の原料だが、火力発電所の排ガスを使うことで基本的には400倍になる。但しガスの溶解は下のグラフのような基本的な溶解曲線のようにはならない。バブリングする場合には吸収効率があるし、同伴するガスによって溶解度は低下する。

 ガスの溶解は特別な装置を用いる必要がある。予備溶解槽を作りそこで二酸化炭素と酸素が調整された海水を作りそれを液体の状態で静かに育成槽に入れる事になる。その調整槽で微量元素などの調整も行う。

 植物プランクトンの他に動物プランクトンやクルマエビなどを養殖する時には育成槽に酸素を補給する必要があり、従って下の図にあるように空気からの酸素を分離して酸素溶解槽を作り、火力発電所からの二酸化炭素と調整して、最大効率になるように運転条件を定める。

 ガスを有効に育成槽へ溶け込ませるのは難しい。直接バブリングした場合は高濃度にするために液体の循環が強くなり、植物プランクトンが攪拌される。さらにクルマエビのような大きな生物でも気泡の流れで流される。またガスの溶解は特殊な溶解槽で一旦、平衡にさせておく必要がある。

 下の図に酸素の溶解についての実験データを示したが、特殊な工夫をした溶解槽で溶解平衡にした状態を示している。空気をそのまま曝気すると最大で10mg/L程度の溶解度を得ることができるが、窒素が共存するので溶解度はそれほど高くならない。

 これに対して純酸素で行うと窒素が無いことから酸素の溶解度が20mg/Lまで上がる。さらに十分に純酸素を溶け込ませた位置(図では吐出口となっている)では30mg/Lと通常のバブリングの3倍にも達する。

つづく