7.  植物プランクトンと栄養

 

 前回、光の影響を整理したので、今回は、栄養と生育の関係を調べてみる。下の図は植物プランクトンではなく、水生ではあるが高等植物の羽衣藻の生長例である。光の強さが同じならもっとも基本的な栄養である二酸化炭素が増えるほど生育が早い。


(羽衣藻)

 そして、光も強い方が生育が早く、1.74kluxの時より22kluxと10倍近くなると、生長量は200から1600へ8倍になっている。当然でもあるが、0.4kluxのように光が弱ければ栄養があっても余り役に立たず、二酸化炭素濃度が20μM程度のところで生長量は飽和してしまう。それが100倍にでもなれば200μMぐらいまで二酸化炭素の濃度が増えると生育量が増える。

 強い光なら濃い二酸化炭素が良い、ということだ。

 化学の世界ではこのようなことを「律速」と言う。つまり光と二酸化炭素のどちらかが植物プランクトンの生育の脚を引っ張る。光を強くすれば生育が増える時を「光律速」と言い、二酸化炭素を増やせば生育が増える場合を「二酸化炭素律速」という。

 つまり植物プランクトンの生育は、「気温、太陽の光、二酸化炭素の量、酸素の量、栄養元素、敵との戦い、体の中の光合成細胞の数、細胞膜の拡散速度・・・」などによって変わり、それらはすべて「律速」になりうる。

 だから、何かを増やしていけば何かで「律速」になるから、そこを増やさなければならない。それが酸素とか栄養元素などであれば外から増やすことができるが、植物プランクトンの体の中の細胞数などは突然変異でもなければ急激には変わらないから、それが律速になると速度を上げることは難しくなる。

 いずれにしても、温度が高く、光が強く、そして二酸化炭素の濃度が高ければ植物プランクトンの生育速度は大きくなり、それだけ炭素が固定される(還元される)事になる。

 次に重要な栄養は、チッソリン酸カリと昔から言われるようにチッソとリン酸であり、海中の生物では骨や殻を作るために使われるシリカ(石の成分)である。チッソはタンパク質や核酸を作るのになくてはならない元素であり、リンはDNAの骨組みやATP, ADPと言われるエネルギーをやりとりする物質にも使用される。

 植物の栄養というと昔は、二酸化炭素、水、チッソ、リン酸、カリといった。まずはそれらが必要であるが、植物の体はそれほど単純ではない。もともと生物の体の仕組みは人間の化学工業より複雑で、巧妙である。

 化学工業ならマイナス100℃でも、300℃でも、時には1000℃のような高温でも反応をさせる事ができるが、生物の体の中は温度がそれほど高くないので、その中で反応を進ませようとするとどうしても触媒がいる。

 「ゆっくり生きよう」ではないが、「そんなにあわててどこに行く」と言ってもそれは敵のいない人間様の言うことで、普通の生物はいつも急いでいないと生存競争に負けて絶滅してしまう。つまりこれまでの生物の長い歴史の中で、「ゆっくり生きよう」などという生物はとっくの昔に絶滅しているのである。

 できるだけ早く反応したい、そして競争相手に打ち勝って生き延びたいと思うと、一番良いのが重金属触媒である。ニッケル、コバルト、鉄、水銀、銅、マンガンなどは最適でいろいろな反応を速めてくれる。でもそれらの多くは「有害金属」ということになっている。

 ではなぜ、生物に必要な触媒が有害なのだろうか、それについては次回にゆっくり説明したい。

つづく