2.  ドイツに学べ?

 

 産業発展とか年金というお金の点では少子化は悪だが、環境という面ではどうだろうか?特に「自然と調和して生きる」ということを考えると日本の人口はもともと多すぎるのではないか?

 もちろん日本ばかりではなく、世界全体も同じで、今から100年前は世界の人口は約14億人だったから、現在の中国一カ国とほぼ同じである。そして現在の世界の環境問題の多くが「産業が悪い」というより「人口が多い」ということに起因していると言っても過言ではない。

 そこで、議論が単なる意見の言い合いにならず、少し考えを進めるために「循環型社会を作る具体的な例」を検討して、それが成立するのか、どの程度の人口なら大丈夫なのかを調べることだろう。

 まず、全体のエネルギーの流れを非常に簡単に書いてみた。

 私たちの生活は太陽の光のエネルギーを使っている。そのうち、太古の昔の太陽の光を貯めておいて、それを使っているのがいわゆる化石資源の「石油、石炭」である。天然ガスはその成因にいろいろな説があるが、地殻活動も惑星としての地球であることを考えれば太陽活動の一環である。

 一方では、現在の太陽の光は大気を温め、土を温め、風を起こし、それを基礎にして海では植物プランクトンや藻が育ち、陸地では草木や森林になる。植物プランクトンや草木・森林はそのまま人間に利用されることもあるが、動物が植物を食べてそれを人間が使うこともある。

 化学を得意にしていない人は判りにくいかも知れないが、人間は、地球上にある二酸化炭素と水という「酸化されたもの」を「太陽の光を使って還元されたもの」へ変わるのを待っていて、それを使うという生物なのである。

 自然が還元するのを待つというのは、いくら科学が発達してもそれは変わっていない。この道筋と違うものは原子力だけで、原子力は自分で太陽を作るということだから根元からできる。あとは「お天道様次第」である。

 大昔の太陽の光でできた石油も石炭も、現在の太陽の光で生育した植物も森林(これも植物だが)もみんな「還元された炭素と水素」である。つまり、CO2とH2Oという酸化物がCとHという還元物になった状態である。

 最近、「水素エネルギー」などというから地球上にエネルギーになる水素があると思っている人も多いが、「エネルギーになる水素」などは地球上には無い。もし水素が欲しくて、原子力を使わないなら、二酸化炭素を出して水素を作らなければならない。

 だから、二酸化炭素を出さない水素エネルギーはこの世に無い。「水素を使う」ということと「石油を使う」ということは実質的に同じだ。だから人間は生きることができ、自動車に乗れ、テレビを見ることもできる。人間の行動はすべて、CO2とH2Oが出る。

 結局のところ、「循環型」を作るためにはCO2とH2Oを何らかの方法でCとHにすることを意味する。今から200年ほど前までは、人間が出したCO2とH2Oが自然の働きでCとHになるまで「待つことができた」が、今は我慢ができない。

 それを戻せるだろうか?

 そして、それは近い将来の日本にとって避けられないことである。下の表でも判るように、日本は人口が多く、国内総生産が高い。それに対して自然の力と比例する国土面積は小さい。

 簡単に表の説明をすると、世界の人口に占める日本、ドイツ、アメリカの人口は日本が2.15%, ドイツが1.40%, そしてアメリカが4.58%である。また同じように面積では日本とドイツがほとんど同じで、アメリカは25倍もある。

 また国内総生産は、アメリカが28.8%、日本がちょうど半分の14.9%、そしてドイツがさらに半分の7.3%である。ドイツは歴史もあり、偉人も多いので大きな国のように錯覚するが、「ドイツは日本の半分」というところである。

 循環型で問題になるのは、「国内総生産を国土面積で割った値」である。生産量が大きいとそれに使うエネルギーや物質も多くなる。そして循環型社会を作ろうと思えば、太陽の光が必要で太陽の光は面積に比例するから、生産量を面積で割った数がポイントになる。

 それがアメリカは4、ドイツが28、そして日本は54である。つまり石油や石炭のような「貯金」が無くなり、いよいよ「今日の太陽」で生きなければならなくなると、この数字が物を言う。まず日本が破綻し、それからドイツ、アメリカはなかなかへこたれないだろう。

 日本は山地が多いけれど、ドイツ並みになろうとすると、人口が今の1億2千万人から8千万人程度になることを意味する。そうなると、「少子化は善」ということになる。日本の人口の第一目標は8000万人。今の出生率で2100年には8000万人を切るペースだから少子化は歓迎ということになる。

 家庭生活、人生の幸福を考えると少子化は悪。
 環境や持続性、循環を考えると少子化は善。

つづく