ハロゲン系難燃材料の燃焼と環境(その1)

 ハロゲン系難燃材料の燃焼メカニズム


 有機材料は材料そのものが燃焼するのではなく、図2に示したように材料が熱で分解して発生したガスが気相で酸素によって酸化され、その時の酸化熱で燃焼を継続する。酸化熱は対流、輻射などによって材料に伝わる。その熱で再び発生した分解ガスの燃焼エンタルピーが最初のエンタルピーより大きいか同程度であれば、さらに再び材料が分解するので、燃焼は継続する。つまり材料の燃焼が継続する条件は「酸化によって発生する熱で新たに燃焼に寄与する分解生成物の量が減少しない」ということであり、逆に材料を燃焼させないようにするためには気相での燃焼で生じた熱で発生する次の分解生成物の量を最初の量より減少させることである。


図 2 有機材料の燃焼サイクル

 そのためには、1)材料の表面にふたをして発生した分解生成物を材料中に閉じこめる(炭化相の形成や無機化合物の混錬)、2)材料の分解そのものを抑制(架橋、炭化)、そして 3)気相におけるラジカル反応の抑制 などが考えられる。このうち3)についてはアメリカ軍が第二次世界大戦中に偶然に発見した方法であり、ハロゲン化合物と酸化アンチモンを用いる。そして1940年代に発見されたこの難燃化方法を凌駕する新たな方法や化合物は60年後の今になってもまだ出現していない。
 通常のプラスチックを燃焼させると材料表面から6-8mmにある気相の酸化反応場の温度は1,200℃付近になる。空気中の温度はその場で発生する熱とそこの熱容量で決まるので、酸化反応を抑制すれば発熱量が低下し温度が低下する。たとえば高温の酸化反応場から材料表面に達する熱が主として輻射で伝熱すると仮定し、酸化反応を2割ほど抑制することに成功したとすると、酸化反応場の温度が1,200℃が1,000℃になるので、材料へ到達する熱は温度の4乗に比例することから、ほぼ半分に減少する。熱が半分になって材料の分解が半分になれば、揮発する燃料ガスも半分になり、気相の温度はさらに低下する。これがハロゲン化合物と酸化アンチモンによる有機材料の燃焼抑制のポイントであった。もしハロゲン化合物と酸化アンチモンによる難燃方法を自由に使うことができたら、火災はもう少し減少し悲惨な犠牲も減っただろう。しかし、ハロゲン化合物は欠点がある。その一つが「環境を汚染する」と言われたこと、場合によっては酸を発生すること、腐食性があることなどである。次の節ではこのうち、ハロゲン化合物と環境問題を取り上げる。

 

第三回 おわり