7  無鉛はんだ及び関係する金属の基本的特性

7.1  まとめ表


 2成分系の主な無鉛はんだの熱的特性をTable 71に示す。スズの融点は232℃であり共晶点がSnの方によっているSn-Sb,Sn-Ag系は融点が高く238℃、及び221℃である。Sn-37Pbは183℃に融点があり、それ以下のものとしてはSn-58Bi、Sn-52Inがある。
 
 特にSn-52Inは融点が120℃と低く、今後の主力はんだにはならない。熱伝導率はCuが高いことは有名であるが、Snは必ずしも高くはなく、Sn-3.5Agは銀が入っていると言っても3.5%にしか過ぎないので熱伝導率は低い。

Table 71 Comparizon of Fundamental Properties of Solder Alloys

 熱線膨張率はCuが低くSnが高い。低融点で組織がしっかりしていないスズは電気材料としては必ずしも優秀な材料ではないことが判る。また同じ2成分系の力学的特性をTable 72に示す。
 
Table 72  Thermal characteristics of solders

 三成分系の特性は全体の数が膨大なので網羅的に示すことはできないが、ある特定の2成分系に第三元素を添加する研究が多い。例えば、Sn-58Bi、Sn-3.5Ag系に第三成分を添加したときの融点をTable 73 に示す。

 Table 73では基本となるSn-58BiにSb、Cuなどを添加して融点の変化を観測している。融点は組織の微妙な変化などによっては左右されないのでその元素の持つ基本的な融点が反映される。従ってこの表のように計算値と実験値はおおむね一致するのが普通である。融点を微妙に調整するために多くの場合、第三元素、第四元素が用いられることがこの表から判る。

Table 73 Melting points of multi-components solders

 Sn-3.5Ag系にビスマスを添加したときの系統的な融点の測定も行われている。この場合は更に系統的に実験を行っている。Sn-3.5Agに対して系統的にBiを添加してその融点の動きを見ている。多くの会社に於けるグレードの開発や小さい改良実験はこの様なデーターに基づいて行われており、おそらくは既に実験された多くのデーターが整理され公表されれば多くの合金についての整理を進めることができると考えられるが、惜しいことにそれはほとんどなされていない。

Table 74  Chemical Composition and Melting Temperature of Sn-Ag-Bi Solder Alloys

 残念なことではあるが、企業に於けるデーターが公表されないのは日本において著しく過度な競争と秘密主義になっている日本の経営者と研究責任者が国民的長期的視野でデーターをより多く公表されることを望む。特許という制度があるのだから、「特許を取れば公開」という原則で進むことが望まれる。
 
 もともと特許という制度がイギリスで誕生したのは、科学的な進歩を促すために発明を公表させ、その替わりにその人の権利を守ると言うことにある。現在の日本の企業は特許も守るしそのうえ科学的事実を公表しないという風潮になってきている。


7.2  関係する金属と金属間化合物の基礎物性

 Table 75に主な金属間化合物の基礎物性を示す。

Table 75 Cu,Sn,Niの金属間化合物の基礎物性(Frear p.60 Table)

また、単独の金属の物性を参考までにTable 76に示した。

Table 76 単独金属の特性(Frear p.61 Table)


(キーワード: 無鉛はんだ、名古屋大学 武田邦彦)

8へ続く