6 主な三成分系はんだ合金状態図

6.1  Sn-Bi-Ag系


 Sn,Bi,Agを用いた無鉛はんだ材料はSn-37Pbはんだの代替材料 としてかなり有望なものである。Sn-Agははんだとしての基本的な特性は満足しているし、クリープなどの特性も良い。欠点といえば融点が高いことであるが、今後のはんだの融点としては高いことは必ずしも悪いとは言えない。
 
 またSn-Agはんだの融点を下げようと言う場合にはBi等の第三成分を添加する方法が有力である。しかし第三成分の添加は状態図やその特性が急激に複雑になることは避けられない。特に状態図にあっては無鉛はんだの候補材料について全ての三元系の状態図を実験で揃えるのは困難である。

Figure 61 Sn-Bi-Ag系の状態図(230 ℃) TMSB607A
R 61 Kattner, U. R., and Boettinger, W. J., J. Electronic Materials, Vol.23, No.7, p.603 (1994)

Figure 62 Sn-Bi-Ag系の状態図(138℃)(R 61 :TMSB608B)

 熱力学的な考察と計算機によって状態図を書き、それを部分的に実験に合わせてその正当性を証明する方法が採られている。Sn-Ag-Bi系においてもアメリカのthe National Institute of Standards and Technologyが中心になって研究を進めている。この手の研究報告は最初に複雑な計算式が羅列され、その後の計算機で打ち出された多くの図が掲載されるのでとても見難いものである。
 
 ここではその中から230℃、と138℃のSn-Bi-Ag系の状態図をFigure 61、Figure 62に示す。この系では230℃はL+ζAg=Ag3Sn+(Bi)の温度から8.6℃低いところに当たり、138℃はSn-Biの共晶点であるとともにSn,Bi,Ag3Snの共晶点より1.5℃高い温度に相当する。

Photo 61 95,54%Sn, 1.14%Bi, 3.32%Agの組織図(scale marker=50μm: TMSB609)

  96.2%Sn, 3.8%Agの組織図を示す。

Photo 62 96.2%Sn, 3.8%Agの組織図(scale marker=25μm: TMSB609)

 Sn-Ag系に比較してBiを添加した組織は微細で組織図としては良い特性が予想される。


6.2  Sn-Ag-Zn系

 Sn-Ag系は無鉛はんだのなかでももっとも有望なものと考えられているので更にその系に第三成分を添加してより良いはんだを作ろうとする研究がある。共晶組成であるSn-3.5Agにわずか1%のZnを添加することによってそのミクロ構造は大きく変化する。Photo 63のaは低倍率の写真で Sn-Agの標準的なものである。この写真を拡大したものがbである。
 
 これに対してcは三成分系の低倍率、dは高倍率の写真である。aの黒い部分がSnのデンドライトで20-200μmの大きなものである。純Snの部分は共晶合金よりかなり柔らかい。つまりSn-Ag系は柔らかい純Snの部分とSn-3.5Agの共晶部分の混合物である。写真bにおいて明るい部分と暗い部分は完全に層分離していることが判る。
 
 このデンドライトはかなり安定で室温では数ヶ月でも組織変化は見られない。Znを0.1%入れたSn-Agの構造はSnのデンドライトが微細になりより均一な構造になる。写真cで見られるように1%Znの組成ではさらに均一な構造の写真が得られる。X-ray(EDX)等を用いた細かい分析ではZnはAg3Snの中に細かく分散して取り込まれている。この三成分系は125℃で抜群のクリープ特性を有する。

Photo 63 Sn-3.5Ag-1%Znの組織写真(TMSB637A)
R 62 McComack, M., and Jin, S., J. Electronic Materials, Vol.23, No.7, p.635 (1994)

 クリープ特性は力学的特性を述べるところで詳述するが、三成分系の研究が進んでいる理由は基本となる二成分系では性能的に十分でなく、その結果ある元素を加えてそれを修正するという研究に進展する。その結果三成分系が研究されることになる。
 
 ある基本組成のはんだが二成分系では融点が高くなって使いにくいとすると、それをカバーするために融点が低くなる添加物を入れる。そうすると力学的特性が低下したりするので、その三成分系をもとにして更に第四成分を入れる場合もある。その様な場合にはついには4成分系になることすら珍しくない。4成分系になったからといってさほど問題はない、四成分系での状態図の議論はとても困難なので結局は状態図から離れれて職人芸で行うことになる。

Figure 63 Sn-3.5Ag-1%Znのクリープ特性(TMSB637B)


6.3  Cu-Sn-Pb系

 Cu-Sn-Pb系はハンダと銅の界面にできる金属間化合物の生成を考えるときや濡れ性を考慮するときには書かせないものである。その状態図を示す。

Figure 64 Cu-Sn-Pbの状態図の概要

Figure 65 Cu-Sn-Pb状態図


(キーワード  はんだ、合金、三成分、Sn, Bi, Ag, 無鉛はんだ、融点、クリープ、第三成分、三元系、共晶、デンドライト、状態図、金属間化合物、名古屋大学、武田邦彦)

7へ続く