地球の誕生は今から46億年前。宇宙が150億年前に誕生したのだから、それから100億年も経っている。その100億年の間に多くの星が誕生し、そして死んでいった。

 ジャーナリストのガイ・マーチーはその著書の中で、次のような意味のことを書いている。

「生物はこの世に生を受け、成長し、盛期を迎え、衰退し、そして死ぬ。川は小さなせせらぎとして誕生し、その流れは次第に大きくなり、やがて青年期の荒々しい川になる。河川の両側には木が生い茂って最盛期を迎え、やがて川底に堆積した土砂が川を老齢化させる。そしてその川も死を迎える。」
「かけがえのない命を持つ人間と、無生物に見える川、そして山。何が違うのだろうか?なぜ、川も山も誕生して、死ぬのだろうか?」

 川には「意識」は無いだろう。「人生観、人生の目的」も無いかも知れない。ただ「物理的」に時間が過ぎていくだけなのに、彼らには人生があり、誕生し、成長し、繁栄し、老衰し、そして死ぬ。人生の楽しみが無いのに死ぬ。

 人生、そして人生の目的が無くても川は死ぬ。

 星も同じだ。宇宙に散らばっているチリが何かの偶然で集まり始める。そうすると重力が発生し、ますますチリが集まる。その星はまだ大気が発達していないので、次々と隕石が衝突し、クレーターができる。

 誕生したばかりの星はまだ危なっかしい。隕石は次から次へと落ちてくるし、軌道も不安定だ。何かの大きな衝撃があれば軌道を外れてはるか彼方の宇宙へ飛び、そこに存在するブラックホールに吸い込まれてしまうかも知れない。

 でも、そんな赤ちゃん時代を無事に過ごすと、後は、時間がゆっくりと過ぎ、地球のように大気で覆われたり海ができて安定してくる。

 そして、生物が誕生して最盛期を迎える。どんなものにも幸福な時代、楽しい時、繁栄している時がある。永遠と思われたローマ帝国、「巨人は永遠に不滅」なはずの巨人・・・でも「時は過ぎていく」という原理原則に逆らうことはできない。

 時間というのは恐ろしいものである。繁栄そのものが衰退の要因を作る。もしかすると「楽しむ」ということは「苦しむ」か「滅びる」ことによってバランスを取るのかも知れない。いや、楽しまなくても若い時代や勢いのある時代を経験すれば滅びる。

 なぜかは神様に聞いてみなければわからないことだ。

 自転している地球は自転速度が弱まるか、あるいは太陽に飲み込まれて終わる。その後、太陽は赤色矮星となって死ぬか、アンドロメダ大星雲と衝突して粉砕される。

 現在の地球は24時間で1回転している。.朝、太陽が東から昇り、午前が終わると太陽は高く中天に昇る。それまで5,6時間はかかる。そして午後の6時頃になると太陽は西に沈み、一日が終わる。

 そんな毎日を過ごしている私たちの感覚から言えば、「地球が誕生した時は一日が4時間半だったのですよ」などと言われても俄には信じられない。太陽が昇ると1時間で昼食になり、それからまた1時間しか経たないのに夕食になる。慌ただしい。

 そして地球が消滅する時、それは太陽が膨れてきて地球を飲み込む時だが、一日は80時間ほどになっているという。昼が40時間になるのでずっと起きているのは辛い。もっともその頃になると何でもゆっくりやるような生物が繁栄しているだろうけれど・・・

 「自転」というのは何かの弾みで起こる。いろいろ研究があるが最初に回転力が付くのだ。かなりの速度で回っているのだから、いくら真空中でもエネルギーを損失する。特に近くに「月」という大きな衛星があるため、引力が働くし、潮の満ち引きもある。

 潮が満ちたり引いたりするということは膨大な水を移動させなければならないし、摩擦熱も出る。毎日、それだけで自転のエネルギーは消耗していく。

 地球の自転のエネルギーは徐々に熱になって宇宙空間に散り、それは再び戻ってくる事は無い。エントロピー増大の原理が働くので、自動的に地球にエネルギーが供給されるということは起こりえないのだ。何故なら逆はありえないというのがこの世の定めだからである。

 誕生したばかりの地球。地表にあった重たいものは徐々に下の方に沈み、軽い元素が地表に出る。だから、「土」という軽い物が地表を覆った。元素で言えば、ケイ素、カルシウムなどであり、窒素や二酸化炭素などの気体は大気を構成した。水が少しずつできて地表にしみ出し、海を作っている。

 時間が進むから「止まっている事ができない」。軽い元素は「浮き」、重い元素は「沈む」。浮くのも沈むのも時間が必要である。そして変化する。人間が「生きていれば歳を取る」というのと「軽い元素が浮き、重い元素が沈む」というのは同じである。

 私は時間を考える。そうすると、次のように感じる。

 生きていれば楽しい、でも楽しいということは終わりになることでもある。時が止まれば楽しめない代わりに、終わりも無い。だから、人生には目的が無いのだ。人生を形作る時だけが存在し、それしか目的にならないという私の信念は地球の誕生と成長から確信となる。

つづく